運命の心理学的な正体
「運命はあるのか、ないのか?」誰でも一度は考えたことがあるかと思います。今回は運命の心理学について話していきます!
あるいは別の言い方をすると、心理学的に見て運命を感じるというのはどういう現象なのかについて話していきます。
先に答えを言ってしまうと、一般的に言われている「生まれた時から決まっている運命」や「運命の恋人」は心が生み出した錯覚です。
また「好きな人との運命の出会い」というのはあなたの感情が導いた答えであって、その感情は好きになった相手との思い出と記憶によって作られています。
運命が心のなかに生まれる理由
どうして運命というものが生まれるのかというと、私たちは自分に都合のいい出来事しか記憶しようとしない心理があるからです。
これが今回のキーワードであり、答えそのものです。心理学の専門用語で言うところのバイアスと呼ばれるものですね。
バイアスというのは偏見や思い込みなどを含めた、自分で意識してコントロールできない凝り固まった考えや価値観です。
心は見た目で判断している
たとえば、見た目が恐い人が怒鳴り散らしていたら「いかにもやばそうな人だ。相手にしてはいけない」と思う気持ちもバイアスです。状況をよく知らないのにも関わらず判断をしていますよね。
逆に見た目が優しい人が怒っていたら「あの人がそんなに怒るなんて。余程ひどいことをされたんだな」と思う気持ちです。私たちは状況や相手によって意味を変えて考えてしまうのです。
この気持ちはたいていの場合、私たちの役に立っています。つまり、見た目の恐い人は見た目の優しい人よりも怒りっぽいし、怒ったら手が付けられない、という可能性は逆の場合よりも高いのですね。
バイアスを使って判断しやすくしている
もちろん最近の社会や文化の多様化によって、見た目だけでは判断しづらくなっていることはたしかですし、見た目だけで判断することは明らかに間違っています。
しかし、私たちはいつでも見た目以上の情報を手に入れられるとは限りません。知らない人たちに逐一インタビューして知り合うわけにもいかないですからね。
そこで生まれつきバイアスを使って物事を判断しやすいように工夫しているのです。
しかし、確かにこのバイアスはたいての場合は役に立っていますが、時に間違います。というよりも、長くなるので詳しい説明は省きますが、バイアスは当たることも多く、間違うことも多いのです。
運命もバイアスで作られている
「運命」という感覚もこのバイアスによって導かれています。
この場合のバイアスは、運命的な出来事をよく記憶し、そうじゃないものは「そういうこともあるだろう」と軽く考えるという働きをします。
たとえば私たちは、恋人や家族が自分の気持ちをドンピシャで当てて理解してくれたときのことを大切に記憶していますがこれもバイアスです。
人の気持ちを正確に理解するのは難しい
しかし、相手の気持ちを理解しようとしても、実は当たらないことの方がずっと多いです。細かいことを含めると分母の数が無限になるのでほとんど当たりません。
右と左ではどっちが好き?
水色と空色ではどっちが好き?
というような細かい質問を続ければ、相手の考えていることを当てられない数が多いのは当たり前ですよね。人の気持ちは正確にわからなくても当然なのです。
都合の良いことしか記憶しないバイアス
しかし私たちはそういう細かい失敗は「そりゃ無理さ」「そういうこともあるさ」と軽く流し、当たりもしないようなことをたまたま偶然ピタリと当てた場合は「やっぱりわかってくれているのね、すごい!」と鮮明に記憶してしまいます。
この積み重ねによって「運命」というのはわたしたちの記憶の中に形作られていくのです。
というわけで、もしも運命に振り回されて不幸になっている自分に気づいたらこのバイアスの存在を意識して考え方や行動を修正していってください。心もバイアスも自分が幸せになるためにうまく使いこなしていきましょう。