内向的な性格は1つではない
一般的に、「内向的な性格」と聞くと、「内気」「恥ずかしがりや」「人見知りで非社交的」といったふうに考えられることが多いですよね。
しかし、人間の性格を専門に研究しているジョナサン・チーク心理学教授によれば、「恥ずかしがりやであること」「非社交的であること」「内省的であること」はそれぞれに独立した性格特性であり、これらを「内向的」という言葉でひとくくりにはできないと言います。
たとえば、「恥ずかしがりやではあるが社交的な人」や「内省的ではあるが恥ずかしがりやではない人」など、内向的性格特性を一部だけしか持っていない人も実は多く存在しているのです。
2011年におこなわれたウェルズリー大学心理学部のジェニファー・O・グライムス、ジョナサン・M・チーク、ジュリー・K・ノレム博士らの研究では、人が持つ内向的特性について調べるために、内向的な性格であると診断された225名の女子大生と516名の一般男女を対象に調査を行いました。
すると、ひとくちに内向的な性格といっても、孤独に関する好みや思考の傾向によって大きく4つの種類にわけられることがわかったのです。
内向性を4つに分類した STAR モデル
研究で見つかった個別の内向性はそれぞれ、社交型内向性(Social Introvert)、思考型内向性(Thinking Introvert)、不安型内向性(Anxious Introvert)、自制型内向性(Restrained Introvert)の4つに分類され、その頭文字をとって「STAR」モデルと名付けられました。
それぞれの内向性の特徴を順番に解説していきます。
社交型内向性
社交型内向性が高い人は、一般的な「内向的な人」のイメージにもっとも近いタイプで、THE 人見知り という感じです。
彼らは自ら積極的に孤独を選ぶ傾向が強く、他者と交流する場合でも、特に親しい友人たちだけで構成された小さなグループでの交流を好みます。
一方で、知らない人が多いパーティやイベントごとは苦手で、大人数との付き合いはなるべく避けようとします。
また、人によっては、どのグループとも付き合わない場合もあります。彼らは読書やコンピューターを使うのが好きで自宅で一人で過ごします。
人付き合いが苦手なわけではない
ただし、人見知りや社交不安を感じるために孤独な暮らしをしているわけではなく、彼らは単純に一人や少人数で過ごすほうが心地良いと感じてそれを実践しています。
これは重要なポイントで、本当は友達が欲しいのに友達が作れない場合と異なり、積極的に一人での活動を好んで実践している彼らは孤独からメンタルヘルスに問題を抱えることは少ないです。
社交型内向性が高い人は、純粋に自分がそうしたいから、ひとりで、または少人数で行動するのです。
なので、その行動の背景には不安や社会的プレッシャーは存在しません。最近よく聞くようになってきたソロ活男子・女子がわかりやすい例ですね。
内向的な人には一人の時間が必要
昔から内向的な人は人付き合いをしたり社交場に出ることによって精神力を消耗するとされてきましたが、社交型内向性が高い人はまさにこのタイプです。
なので、パーティやお祭りなど人の多いところに出かけたあとは、彼らはエネルギーを再充電して元気になるために一人きりで過ごす孤独な時間が必要であると言われています。
思考型内向性
思考型内向性が高い人は、きわめて内省的で思慮深い人を指します。
このタイプの人はあまりにも内省的すぎて頭の中であれこれと考えてしまうため、本人はそうでもなくても結果としてまわりからは人見知りな性格に見えてしまいます。
相手や自分の発言や行動について「これってどういう意味だろう?もしかしてこういうことかな?」というふうに深く考えてしまう感じですね。
考え事や妄想にふけるタイプ
彼らは特に社交の場が嫌いだったり苦手なわけではないのですが、つい考えごとや空想にふけってしまう癖があり、そのせいで他人からは「あまり人と話すのが好きじゃないのかな?」「私と会話したくないのかな?」などと思われてしまう傾向があります。
しかし、彼らはあくまで思考や空想に没頭しがちなだけなので、神経症的な傾向は少ないという特徴を持ちます。
このタイプの人の関心は自身の内側に向かっており、研究者いわく「内面が豊かな人」です。研究者に多そうなタイプですね。
長くなってきたので解説の続きはまた次回に持ち越します。
参考論文
Grimes, Jennifer & Cheek, Jonathan & Norem, Julie. (2011). Four Meanings of Introversion: Social, Thinking, Anxious, and Inhibited Introversion.