人の行動に影響を与えるナッジについて
多くの人は、短期的な満足を犠牲にして長期的な満足を得るよりも、すぐに喜びを得られる選択肢を選ぶ傾向があります。
そのために目の前の誘惑に屈してしまい、掲げた目標が達成できずに後悔することが多々あります。
これを防ぐための方法の一つが、今回紹介する「ナッジ」という心理テクニックです。
ナッジ(nudge)とは、特定の行動を促すための強化(たとえば、野菜が美味しく感じられれば野菜をたくさん食べるようになる)と間接的な提案(たとえば、今がダイエット中だと思い出すことで野菜を食べるようになる)の組み合わせのことを差します。
ナッジを用いれば、たとえば食事量を減らしてダイエットしたり、お金を節約して貯金をしたりといった前向きな行動の変化を促すことができるようになります。
生活習慣を改善するナッジ(理論)とは?
ナッジ(ナッジングとも言う)を発明したリチャード・セイラー博士とキャス・サンスティーン博士は、ナッジのことを「心理的、環境的、社会的な手掛かりを介して、人々がより望ましい意思決定をするように影響を与える政策である」と定義しています。
たとえば、ジャンクフードの代わりに野菜や果物などの健康的な食べ物を目に入りやすく手の届きやすい場所に置いておく、そもそもジャンクフードを家に置いておかない(欲しいときに都度買いに行く)、といったことがナッジを使った一例です。
ナッジを使えば課題の達成を簡単にできる
このようにナッジを利用しても、私たちは依然として自由意志を持っており、何かを禁止されたり強制されたりすることはありません。
たとえば、ナッジを使ってお菓子を家に置かないようにしていても、本当にお菓子を食べたいと思ったのならば、そのときお店に買いに走っていいのです。
しかしそれでも、長い目で見れば、自分たちにとって最善の行動をとることがナッジを使うことでより容易になります。
別の言い方をすると、ナッジとは、努力の敷居を下げたり障害を小さくすることで、簡単に目標に近づけるようにするちょっとした工夫のことです。
ナッジを活用するための2つのテクニック
ナッジは自分に対しても他人に対しても活用することが可能性ですが、使うときのポイントが2つあります。それが「リマインダー」と「プロンプト」という仕組みです。
私たちが目標とする行動を常に覚えておくためには、それを定期的に思い出させてくれるリマインダーや、適切な行動を促してくれるプロンプトを利用することが有効になります。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
リマインダーとは?
リマインダーとは、たとえば、「紙に書いた目標を部屋に貼る」「時間になったら予定どおり行動できるようにアラームをセットする」といったことです。
こうして目標を再確認することで「あ、そうだった!」と思い出すことができ、これが望ましい行動につながります。単純ですが、わかりやすく、昔からよく使われている心理テクニックですね。
人は、偉くなりたいから有名になりたいから才能を磨くのではなく、誰かの役に立てるから才能を磨くようになります。「人が努力できるのは他者がいればこそ」です。やる気がなくなったら、大切な誰かを思い出してみてください。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生@進化学と恋愛心理 (@kruchoro) 2021年9月20日
プロンプトとは?
もう一つのテクニックであるプロンプトとは、たとえば、「友達と一緒に勉強する」「家族や上司に目標達成を公言する」といったことが挙げられます。
つまり、「行動しやすい(サボりにくい)環境を整えるやり方」といった感じですね。こちらもいろんなところで目にするテクニックですね。
環境を変える
また、最初のほうに挙げたダイエットの例のように、目標から遠ざかるような誘惑を事前に減らしておくことでも、たとえばリバウンドや後戻りといった失敗を防ぐことができるようにもなります。
そして、友人や家族といった社会的な圧力も、目標達成に役立つ責任感を高めるための有効な手段となります。
これらのテクニックを組み合わせて目標達成をしていくのがナッジという方法です。
どれも方法を見るとシンプルなものですが、私たちの感情に訴えかけてくるので効果的です。今度からナッジを意識して目標達成に取り組んでみてください。
参考論文、参考文献
実践 行動経済学 Kindle版
リチャード・セイラー (著), キャス・サンスティーン (著), 遠藤 真美 (翻訳)
セイラー教授の行動経済学入門 Kindle版
リチャード・セイラー (著), 篠原勝 (翻訳)