- 間違った締め切りをつくると逆効果
- 正しい締め切りの作り方
- 締め切りを守れないのが人の心理
- 双曲割引、割引効用の心理
- 人が行動を起こすのはいつなのか?
- 心理的な罠!デッドラインラッシュ
- デッドラインラッシュを防ぐ方法
- デッドラインテクニック
- 締め切りがないと何もしない
- タイムプレッシャーテクニックでやる気を起こす
- 参考論文
やりたいことすらもできない人間心理
私たちは基本的に自分に甘い生き物です。やるべきことを先延ばしにしてダラダラ過ごすのは日常茶飯事です。
さらに、これは驚きの話なのですが、私たちはやるべきことを先延ばしにするどころか、やりたいことすらも先延ばしにしてしまう癖を持っています。
つまり、人類みなダメ人間なのです笑。どれだけ面白そうに感じる計画やアイディアであっても、実際に私たちが行動を起こせなかったり時間がかかるのは、この心理があるためなんですね。
間違った締め切りをつくると逆効果
こうした先延ばし癖を防ぐための心理テクニックとして、「○日までに~をやる」という締め切りを作って自分にプレッシャーを与えるというものがあります。
しかし、この締め切りを利用した心理テクニックには注意が必要です。
なぜなら、たとえ締め切りを設けたとしても、その締め切りの作り方が心理学的に間違っていたら、期限内に作業を終えることが難しくなって、逆に先延ばしをしてしまうからのです。
正しい締め切りの作り方
実は、締め切り(デッドライン)というのはただ作ればいいというものではないのです。締め切りにも、正しい締め切りと間違っている締め切りの2種類が存在するのですね。
そして、きちんと科学的に正しい目標の設定方法でなくては、行動を促してはくれないどころか、その締め切りの存在がさらにサボってしまう行動を生み出す原因にすらなってしまうのです。
締め切りの作り方を間違えると、たとえば、「まだ時間に余裕があるから」とポジティブに考えて今すぐに行動しなくなってしまうことがあります。おそらく誰もがこれと同じ経験をしたことがあるでしょう。
というわけで、今回はそんな心理的な罠を回避するための、科学的に正しい締め切りに関する心理学を解説していきます。
せっかく良い目標を見つけたのにもかかわらず、いつもダラダラする癖があって、なかなか行動できずに困っている人は参考にしてみてください。
締め切りを守れないのが人の心理
2005年に締め切り前の行動について調べた心理実験が行われました。
スイスのチューリッヒ大学で心理学を研究しているコーネリアス・コーニグとマーティン・クラインマン博士は、学生に「13日後に試験を行います」と告げて、その締め切りを基準にどれくらいの学生がいつ頃から試験に向けての勉強をし始めるのかを調べました。
すると、テストをしますと告げられたその日である13日前に勉強を始めた人はなんと0%でした。試験があることを予告された日に勉強をし始めた学生は一人もいなかったのです。
気持ちはわかりますが、一人もいなかったのは驚きの結果ですね。何人かの学生はテスト勉強を張り切ってやっているものなのだと思っていました。。いや、ないですね笑。
双曲割引、割引効用の心理
このように、たとえ自分の人生に大きく関わるような事柄であったとしても、その締め切りを守れないのが人間の心理です。
私たちは未来のことを正確に見積もったり、計画通りに行動することが苦手です。これは、将来に受け取る結果を割り引いて考え、過小評価してしまう傾向を持っているからです。
このように将来の結果を割り引いて評価してしまう心理を「双曲割引(Hyperbolic discounting)」や「現在バイアス(Present bias)」と言います。また、経済学用語では「割引効用(Discounted utility)」とも言います。
私たちは将来の結果を低く見積もって現在の結果を高く見積もってしまう気持ちがあるからこそ、計画や締め切りの設定はうまくやらないと意味をなさなくなってしまうのですね。
人が行動を起こすのはいつなのか?
では、どのくらい近くにテスト期間が迫ってきたら人は行動するものなのでしょう?
この実験の続きによると、試験の前日になってようやく勉強を始めた学生たちの割合はなんと半数を超える55%もいたことがわかっています。試験の前日になるまでクラスの半分以上の学生たちがテスト勉強を始めなかったのですね。
こうしてみると、テスト勉強はあまり意味がなさそうですね笑。前日だけに勉強した内容がその後も記憶に定着する可能性はほとんどありませんからね。
この研究結果は客観的に見れば「おかしい!もっと早く勉強すればいいのに!」と思うのですが、実際には誰もが先延ばしをしてしまう性質を持っているので、なかなかそうはならないのが現実です。
それくらい私たちの中にある「やるべきことを後回しにしてしまう」心理は現実に強く作用してしまうのです。
これは人間が進化の上を見つけてきた心理であり、弱さではありません。むしろ強さとして作用してきたからこそ、現代まで先延ばし癖が残っているのです。もちろん、私はテスト勉強はきちんとやってましたけど。
心理的な罠!デッドラインラッシュ
このように締め切りの直前まで何もせず、締め切りが目の前に近づいてようやく慌てて行動するようになる状態のことを心理学の言葉では、「デッドラインラッシュ(Deadline rush)」と呼びます。
言葉の響きはカッコいいのですが、実際にやっていることはただ慌てて作業しているだけです。なので、なるべくならデッドラインラッシュが起こらない状況が好ましいと言えます。
というわけで、ここからはデッドラインラッシュを回避するための方法について解説していきます。
デッドラインラッシュを防ぐ方法
デッドラインラッシュを起こさないようにするためには、まず最初に締切日を2つ用意し、実際の締め切りの前に架空の締め切り日を作っておきます。そして、この架空の締め切り日を実際よりも早めに設定しておくのです。
たとえば、2週間後に締め切りの仕事があるとしたら、架空の締め切りを1週間後に設定しておきます。そうすることで実際には2週間後が締め切りでも、少なくとも6日後には作業をし始めることができます。
余裕を持たせて1週間後が締め切りということにしておいたことで、締め切りを強く意識する機会が増えて行動するようになるのですね。
デッドラインテクニック
これを心理学用語ではデッドラインテクニックと呼びます。「この日になるまではこの状態にしておこう」というような目標を複数個持っておくことで、早めの行動が促されるようになるのです。
このテクニックは、元々締め切りがない目標の場合にも自分で架空の締め切りを作ることで使えますし、長期的な目標だけではなく1日のうちの細かな作業に対して制限時間を設ける細切れのテクニックとしても使えます。
例えば、20分間だけ読書をしようだとか、30分間は仕事だけに集中しよう といった簡単なものでも効果があります。
デッドライン(締め切り)を複数個作って、それを意識するようになるだけでも私たちは行動するようになるのです。
締め切りがないと何もしない
逆に言うと、時間や締め切りを意識できないと私たちはどんどんダラけてしまうということです。
「ちょっと休もうと思ったのに、気づいたらもうこんな時間!」というような経験は誰にでもあるかと思いますが、締め切りを意識しないとこうなってしまうのです。
ただし、締め切りが一つだけだと私たちは「これくらいなら余裕だろう」と希望的な観測をしてしまうので、必ず判断を見誤ってしまいます。
なので複数個用意して、自己分析をしながら希望的な観測を少しずつ修正していくことが大切です。
人生を楽しむコツは綿密な計画です💡
私たちは実際に何かをするよりも、これから行うことについてあれこれと楽しく想像する方が好きな生き物です🤔
▶️休日や仕事終わりに限らず、日々の中に計画性を持ち、自分の考え通りに行動してみて仕事や勉強を楽しみましょう🤩✨
おはようございます🙇♂️
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2019年3月26日
タイムプレッシャーテクニックでやる気を起こす
このように私たちは、制限時間がある方が適度なプレッシャーを感じることができて作業に集中することができるのです。
これは「タイムプレッシャーテクニック」と呼ばれています。目標や締め切りは細かな設定の方が取り組みやすくなる心理効果があるのですね。
こうしたテクニックに効果があるのは、私たちは大きな目標や遠すぎる将来の予定はぼんやりとした形で適当にしか考えられないからです。未来のことを真剣に考えるのは苦手なのですね。
なので、目標や締め切りは細かく設定して現実感を持たせておくと達成しやすくなるのです。
締め切りが段階的に訪れることで、目の前の課題を脳みそが現実の問題として認識して、目標達成のための行動を起こしたい気持ちにさせてくれるのです。
この方法がうまくハマって先延ばし癖が一発で治ることもあるので、「ずっと前から計画していたことが実行に移せていない!」という人は、ぜひ試してみてください。
大抵の人は締め切りのギリギリになるまで行動しないそもそも私たちは未来のことを考えるのが苦手で今を優先する性格であるこの性格のために締め切りを作ってもサボってしまうなので、本当の締め切りの前に架空の締め切りを作って現在の問題に置き換えると行動するようになる