第一印象は時間が経っても残る
ある人が公職に選ばれるかどうかは、信頼感や好感度ではなく、その人が有能そうな顔をしているかどうかが大きく影響しています。
第一印象を良くするチャンスは二度とありません。面接試験やパーティで初めて会う人が、あなたに会った最初の60秒で、性格や個性といったあなたに関する詳しい印象を形成します。しかも、それはその後もほとんど消えることがないのです。
プリンストン大学の心理学者ジャニン・ウィリスとアレクサンダー・トドロフ博士らがおこなった2006年の実験によると、見知らぬ人の顔を見てその人の印象を決めるのに必要な時間は10分の1秒で、それ以上の時間をかけてもその印象は大きく変わらないことが明らかになりました。
驚くほど短い時間ですね!
能力も性格も見た目でバレる
この研究では、顔の見た目による判断を調べるために、魅力、好感度、能力、信頼度、攻撃性といった特徴に焦点を当てて別々の実験を行いました。
参加者は、初めて見る顔の写真を100ミリ秒(1/10秒)、500ミリ秒(1/2秒)、1,000ミリ秒(1秒)のあいだだけ見せられ、すぐにその顔の特徴を判断するよう求められました。
例えば、「この人は有能かどうか?」などの判断です。そしてその質問に答えるまでにかかった時間を測定しました。その後、被験者には自分の判断に対する自信の高さも尋ねられました。
また、参加者の判断は、顔の性格特性を判断するための時間的制約がなく、好きなだけ考えてもいい状況をセッティングした予備の研究で別の参加者グループが同じ写真に対して行った評価と比較されました。
この予備調査では、写真に写っている人物の特徴について、各参加者の間で強い一致が見られていました。
人の印象は瞬きをしているあいだに形成される
それらのデータを分析した結果、5つの特徴のいずれにおいても、最も短い時間(1/10秒)の露出での判断は、時間的な制約のない判断と高い相関を示しました。
しかし、1/2秒、1秒と露出時間を長くした場合には、相関の増加は見られませんでした。
ただし、一部の判断では信頼性が向上しました。この結果は、長い時間をかけて判断することが単にその判断への信頼を高める可能性があることを示唆しています。
また、応答時間を見ると、1/10秒という短い時間で顔を見たときも、長い時間をかけて見たときと同じくらい早く判断していることがわかりました。
つまり、長く相手を観察したときも、短く観察したときも評価は変わらなかったということです。
私たちはまさに瞬きするあいだに、目の前の人を細かく判断できているのですね。
時間が長くなるほど印象が強くなる
ただし、露出時間が長くなると、人の印象がより差別化されます。
長く見ることで、判断の信頼性が高まり、より詳しく相手の性格を見抜けることがわかりました。
1/10秒のチラ見による判断と、時間的制約のない判断の相関はいずれも高かったが、すべての特徴の中で最も相関が高かったのは「信頼感」でした。つまり、私たちは相手が信頼できるかどうかを見た目だけで見抜くのが得意なのですね。
平凡な見た目の人ほど信頼度が高まることがわかっています。そう考えると、日本人が平均的な見た目や装いをしようとするのは実は理にかなっているんですね。平凡に活動することは相手の信頼を勝ち取ることにつながるのです。平凡な顔して生きていきましょう笑。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生@進化学と恋愛心理 (@kruchoro) 2020年8月11日
信頼感と魅力は一瞬で見抜かれる
また、相手に対する信頼感は、魅力のつよさと並んで、参加者が最も早く評価できた特徴でもありました。
研究者らは、進化心理学に基づいて、他人の信頼性を迅速かつ正確に判断する能力が、重要な生存メカニズムとして進化したのではないかと指摘しています。
この研究では、0.1秒となっていますが、実際には最も短い可能性もあります。
つまり、私たちは一瞬にして、目の前の相手が信用できる人かどうか、魅力的な人かどうかを評価・判断しているのです。
一目ぼれが起きるのもこの心理が関係しているのでしょうね。人に好かれたり信頼されるために、見た目を改善することがいかに大切なのかがわかりますね。
参考論文
Willis J, Todorov A. First impressions: making up your mind after a 100-ms exposure to a face. Psychol Sci. 2006 Jul;17(7):592-8. doi: 10.1111/j.1467-9280.2006.01750.x. PMID: 16866745.