頭が良い人ほど細かいことにすぐ気づく
前回は、ハイパーブレイン/ハイパーボディ理論に関する研究について紹介をしましたが、今回もこの研究をより詳しく見ていきます。
高いIQを持つ人は、周囲の環境に対する注意力が高まっていることもあり、環境や刺激に対して中枢神経系が過敏に反応する傾向があります。
また、IQの高い人の中には、服のタグや不自然な音などの些細なきっかけで、低レベルではありますが慢性的なストレス反応が起こり、それが過剰な身体反応を引き起こす人もいます。
多くの人は気にならない、ちょっとした物音や物が肌に触れる感覚でさえも、高度な知性を持った人たちにはストレスになってしまうのです。
頭の良い人は常に緊張状態に
そうして交感神経系が慢性的に活性化すると、闘争・逃走・凍結の状態が続き、身体と脳の両方で一連の免疫変化が起こり、行動、気分、機能に影響を与えます。
慢性的なストレスで神経が過敏になり、日常的に闘争逃走反応(胸がドキドキする)やフリーズ反応(緊張して体が固まる)が起き、免疫が活性化して気分が悪くなったり、身体機能がおかしくなったりしてしまうのです。
日常生活で休まることがない状態とでも言いましょうか、常に緊張していたらそれは体に悪いのは明白ですよね。
精神障害のリスクは2倍から4倍になる
今回の研究結果でいえば、例えば、不安障害の診断を受けている人は、米国では10%強であるのに対し、高IQの人たちでは20%の割合で発症していました。
これらの症状について、高い知能を持つ人では、平均的な人と比較して、診断を受ける確率が2〜4倍になります。
不安障害などの精神疾患にかかるリスクが4倍にまで大きくなるのはつらいですね。
頭の良さは基本的に健康を維持してくれるが上限がある?
高いIQを持つ人は、独特の強さと過剰な興奮性を持っており、それは多くの面で注目に値すると同時に、障害にもなる可能性があります。
これまで多くの研究で、高い知能は、心臓病、脳卒中、喫煙などの生活習慣から発生する病気、がん、呼吸器疾患、認知症など、多くの健康被害の保護因子であることが示されていました。
これらの結果を考えると、今回の研究では、特に免疫・炎症性の調節障害に根ざした疾患や状態を対象としているため、先行研究で見られた健康上の成果と簡単に比較することはできないとはいえ、この結果は驚くべきものです。
言い換えれば、IQの上昇は、ある時点までは保護的なものでありますが、ある範囲まで上昇するとその機能が停止する可能性がある、と研究者は述べています。
普通の人には気にならないような低刺激でも過敏な人にはストレスになります。たとえば、服のタグや人の足音などです。これらの低刺激でも、我慢できるからと言って放置しておくと、どんどんストレスが蓄積されてメンタルを病んでいきます。過敏な人にはある程度やりすぎなくらいがちょうどいいのです。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2021年10月17日
環境にさえ気を配れば症状の発症は防げる
最後に、調査対象となった疾患の多くは、その症状が現れるためには、遺伝と環境の両方の組み合わせが必要だったとのことで、頭が良くてもきちんと環境や刺激に対する配慮と対処をしていれば症状は出ないようです。これは希望ですね。
また、今回の研究では、IQスコアが130以上の高度な知性を持った人たちを対象にしているので、ちょっと頭が良い人たちにもこれらの特徴が当てはまるかはまだ不明です。
しかし、頭が良ければそれだけ細かいところや人の行動の変化にも気づきやすくなるので、自覚のある人はきちんと刺激に対して対処法を練っておきましょう。
参考論文
Karpinski, R. I., Kinase Kolb, A. M., Tetreault, N. A., & Borowski, T. B. (2017). High intelligence: A risk factor for psychological and physiological overexcitabilities. Intelligence. Advance online publication.