【休め】集中力を大きくアップさせる方法は作業の途中で休むこと

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集中力が切れるのは脳が疲れたからではない!

 

2011年に行われたイリノイ大学アーバナシャンペーン校のアツノリ・アリガ、アレハンドロ・レラス心理学教授らの研究によると、タスクから少しのあいだ離れるだけで、そのタスクに長時間集中するための能力が劇的に向上することがわかっています。

 

この研究では、人が同じ作業を長時間続けていると、集中力が低下し、作業のパフォーマンスが低下していくという心理現象について調べられました。

 

こうした状況下での注意力の低下は、研究が始まった実に40~50年ものあいだ、「注意力を維持するための認知的な資源」が消費された結果であると考えられてきました。

 

要するに、仕事をしていて脳みそが疲れたから集中力が切れた!という説明です。多くの人はこれが正しい理論だと思っているでしょう。

 

しかし、今回の研究結果によると、あるタスクをしている途中で人のパフォーマンスが低下し始めるのは、「そのタスクに注意を払わなくなったから」ということが原因であるとされています。

 

つまり、人が何かの作業に集中するとき、その人の注意力や脳みそのエネルギーは問題ではないのです。

 

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刺激が一定のまま続くと注意力が失われる

 

実は「途中から対象への注意を払わなくなる」という現象は、感覚的な知覚でも同じようなことが起きていました。

 

私たちの脳は、視覚、聴覚、感覚などに対する刺激が一定のものであれば、徐々にその刺激を認識しなくなっていきます。

 

例えば、衣服が肌に触れている感覚をほとんどの人は意識しません。これは、体がその感覚に慣れてしまい、その刺激が脳に意味のある形で認識されなくなるからです。

 

ほかにも、痛み、温度、味覚などあらゆるものに人は慣れますよね。ある人が奇抜なファッションを着ていても、それが毎日同じ服装だったら何とも思わなくなります。

 

この心理的な慣れが、仕事や勉強などの認知能力を必要とする作業に集中するときにも起きているのです。集中力の麻痺みたいなものですね。

 

トロクスラー・フェージングとは?

 

レラス教授はこれまでの研究で、時間経過に伴う視覚認識の限界を探り、「トロクスラー・フェージング(別名トロクスラー効果、Troxler’s fading)」と呼ばれる現象を調べていました。

 

これは、周辺視野にある静止した物体に注意を払い続けると、その物体が完全に視界から消えてしまうという現象です。いわゆる目の錯覚、錯視ですね。

 

実際にこのトロクスラー・フェージングを体験したい人は

https://karapaia.com/archives/52208118.html を参照してみてください。おそらくどこかで見たことのある映像が流れます。

 

このように、絶え間のない刺激は、重要ではないものとして脳に登録され、脳がそれを意識から消し去ってしまう仕組みがあるのです。

 

トロクスラー・フェージングと同じ情報処理の方法は思考に対しても当てはまります。

 

ある同じ感覚に注意を向け続けることでその感覚が意識から消えるように、ある同じ思考に注意を向け続けることでその思考もまた私たちの頭から消えてしまうのです。

 

認知力にも起こるトロクスラー・フェージング現象

 

今回の研究では、さまざまな条件下で、コンピューターを使った反復作業に約1時間集中する能力をテストしました。

 

実験のために集められた84人の被験者は次の4つのグループに分けられました。コントロールグループ、スイッチグループ、スイッチなしグループ、無視グループの4つです。

 

コントロールグループには、途中で休憩や気分転換をはさまずに50分間の作業を行ってもらいました。

 

「スイッチグループ」と「スイッチなしグループ」では、事前に4つの数字を記憶しておき、反復作業のタスク中に画面上に数字が表示されたら反応するように指示されました。

 

しかし、50分の実験の間、実際に数字が提示されたのは「スイッチグループ」だけでした(2回の表示)。

 

つまり、スイッチグループだけが集中力の必要な作業中に、ときたま別のタスク(数字)に反応しなくてはいけなかったのですね。「スイッチなしグループ」には、ただ反復作業をしてもらいました。

 

そして両グループとも、課題の終了時に数字を覚えているかどうかの記憶テストを行いました。

 

最後の無視グループは、タスク中にスイッチグループに指示されたのと同じ数字を見せられましたが、それが出てきても無視をするように言われました。

 

短時間の休憩が集中力を大幅に向上させる!

 

すると研究者の予想通りに、ほとんどの被験者のパフォーマンスは、タスクの実行中に著しく低下しました。

 

しかし、驚くべきことに、作業中に数字に反応したスイッチグループの参加者だけは、時間が経ってもパフォーマンスが低下しなかったのです。

 

彼らは、本来のタスクから2回の短い休憩(数字に反応するという別のタスクですが)をとってもらうだけで、実験の間、集中力を保つことができたのです。

 

ただの休憩ではなくて、別の作業に切り替えるだけでも集中力の回復に役立つのはかなり良いですね。

 

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長時間の集中は非効率な働き方

 

今回の研究は、「脳は物事の変化を検知して対応するようにできている」という意識に関する研究結果と一致していることを示しています。

 

すなわち、1つのタスクに長時間集中することは、集中しているように見えて実際にはパフォーマンスを低下させているのです。

 

長時間同じ作業に従事していると集中していてえらいように見えますが、実際にはかなり非効率なことをしていたのですね。

 

レラス教授は、目指すべき目標や作業を一度無効なものにして、その後再び有効にすることで、集中力を維持できるだろうと述べています。

 

 

20分ごとに休憩を入れよう

 

長時間の作業(試験勉強や事務作業など)をしなければいけなくなったら、短時間の休憩をあいだにはさむことが作業を効率的に終わらせるための最善の策になります。

 

この研究では軽いのタスクのような休憩でしたが、こうした短時間の精神的な休憩はやるべきことに集中するのに大いに役立ちます。

 

というわけで、やはり作業の合間にはほどよく休憩を入れておくのが良いのです。今晩のおかずを考えるというような数秒や数分で終わる休憩でも効果があるのでお試しください。

 

この研究では50分のタスクで2回の休憩をはさんでいたので、実践するのなら約20分ごとに休憩をはさむようにしておくと良いでしょう。

 

そう考えると、「20分の作業ごとに5分の休憩を入れる」というポモドーロテクニックはかなり理にかなった心理テクニックだったのですね。

 

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参考論文

 

University of Illinois at Urbana-Champaign. (2011, February 8). Brief diversions vastly improve focus, researchers find. ScienceDaily. from 

www.sciencedaily.com/releases/2011/02/110208131529.htm

Atsunori Ariga, Alejandro Lleras. Brief and rare mental ‘breaks’ keep you focused: Deactivation and reactivation of task goals preempt vigilance decrements. Cognition, 2011; DOI: 10.1016/j.cognition.2010.12.007

https://www.sciencedaily.com/releases/2011/02/110208131529.htm

Hsieh PJ, Tse PU. Illusory color mixing upon perceptual fading and filling-in does not result in ‘forbidden colors’. Vision Res. 2006 Jul;46(14):2251-8. doi: 10.1016/j.visres.2005.11.030. Epub 2006 Feb 15. PMID: 16469353.

https://doi.org/10.1016/j.visres.2005.11.030

目に見えるものが全てではない。そこに在るはずなのに見えなくなる。「トロクスラー効果」を検証する錯視動画 : カラパイア

目に見えるものが全てではない。そこに在るはずなのに見えなくなる。「トロクスラー効果」を検証する錯視動画 : カラパイア
 ちゃんと見ているようで、見えなくなってしまうものがある。そこに確実に在るのに、ある一点に集中してしまうことで、その存在すらを消し飛ばしてしまうのだ。  なんだかちょっと深い話みたいで、「何でもないような事が 幸せだったと思う〜」とかいうメロディ
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