ツァイガルニク効果とは?
ツァイガルニク効果とは、未完了あるいは途中で邪魔をされた課題の方が、すでに完了した課題よりも思い出しやすいという心理現象のことです。発音表記の違いから、ツァイガルニック効果、ゼイガルニク効果、ゼイガルニック効果とも言います。
ツァイガルニク効果は、リトアニア出身で旧ソビエト連邦の心理学者であるブルーマ ツァイガルニク博士の実験によって証明された心理効果です。
この実験は、ドイツのゲシュタルト心理学者クルト レヴィン博士の「人は欲求によって目標指向的に行動するとき緊張感が生じ持続するが、目標が達成されると緊張感は解消する」という考えに基づいて検証されました。
この考えを要約すると、人は目的を持つとプレッシャーを感じ、目的が達成されるとプレッシャーがなくなるということです。
このプレッシャーを利用した心理テクニックが、ツァイガルニク効果です。
無意識に思い出してしまう心理現象
ツァイガルニク効果が生じると、常に無意識の中で特定の物事を考えたり思い出してしまうようになります。
例えば、未完了のまま途中で終わっている課題や作業は、それがあるというだけで頭の中に残り、脳みその一部のエネルギーを消耗し続けてしまいます。私たちの脳みそは未完了のものを忘れることができないのです。
ですが、実はこの心理作用にはメリットもあります。
未完了の課題は無意識のうちにたびたびその存在が思い出されることになるので、その課題に関する記憶の保持がしやすくなるのです。
クリフハンガーとは?
ツァイガルニク効果と似たような心理現象で、クリフハンガーというものがあります。クリフハンガーはツァイガルニク効果を利用した心理テクニックの一つです。
クリフハンガーは物語や解説をまるでハンガーに引っ掛けたかのように「宙吊りのまま」中断して「つづく」としてしまう結末を描く脚本テクニックのことです。
特に人気の高い海外ドラマではよく使われているテクニックです。「えー!そこで終わるの!?」というところで話を終えて次回作へ視聴者を誘導しているのです。
クリフというのは崖という意味で、ドキドキハラハラする崖っぷちのような状態で物語を終わらせるという意味もあります。
ツァイガルニク効果を使った心理テクニック
このツァイガルニク効果が起こる心理を利用すれば、仕事や勉強の効率を上げることができます。
例えば、勉強するときには中途半端に課題を終わらせることで次の時までに記憶が強化されやすくなります。つまり、「勉強はキリの良いところで終わらせないこと」が重要なポイントなのです。
ツァイガルニク効果
未完了あるいは途中で邪魔をされた課題の方が、すでに完了した課題よりも思い出しやすいという現象
未完了のまま途中で終わっている課題や作業は、それがあるだけで脳みその一部のエネルギーを消耗する。このために無意識のうちにたびたび思い出されるので記憶が保持しやすくなる
— 心理学博士ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2019年7月1日
ツァイガルニク効果の弱点
しかし記憶を強化したい勉強とは逆に、仕事ややるべきことといった課題は、慢性的な疲れに感じさせないために、キリの良いところで終わらせる方が良いです。
仕事などの慢性的なストレスに繋がる作業はキリの良いところで終わらせないと、帰宅したとしても、無意識に思い出してしまい、無駄に心を消耗して疲れてしまうことになります。
他の心理学の研究でも、仕事を家に持ち帰ることは心理的な負担となると指摘されているのでやめておきましょう。
未完了のタスクというのは自分の意思とは関係なく、思考に侵入してきて今やっている作業の邪魔をします(これを心理学用語で侵入思考と呼びます)。
考えたくもないことや作業とはまったく関係の無いイメージが突然脳裏に浮かぶので、そのたびに集中が途切れ作業効率が劇的に下がります。なので、仕事は終わらせることが先決なのです。
勉強や仕事が終わらない時の対処法
しかし、どうしても仕事が終わらないということもあります。その時には別の心理テクニックが使えます。
どうしても仕事が終わらないとわかった時、実感として終わりそうもないと感じる時には、とりあえずはその日の作業の終わりを決めて、残った仕事の続きをスケジュールに書き込むのです。
こうして、ただ予定を組み、スケジュールに仕事を書き込むだけで、私たちの脳みそはその作業を終えたと認識してくれます。
困った時にはこのテクニックを使ってツァイガルニク効果が起きないようにしましょう。
障害となる物事もきちんと終わらせた方が良い
同じようにゲームや遊びなどの、本来やるべき作業ややりたい作業の障害となってしまうものに対してもきちんとキリの良いところで終わらせて気分をスッキリさせることが大切です。
中途半端な状態のまま強制的に遊びを終わらせてしまうと、続きが気になって作業に集中できなくなってしまうので、お子さんの教育をする上でも注意が必要です。
さらにはツァイガルニク効果は失恋の心理にも作用してしまうので、中途半端な別れや気になっているのに無理に気のないふりをする素振りをすると余計に胸が苦しくなります。
ツァイガルニク効果は、未完了の課題や作業が気になる心理現象
勉強は未完了な状態で終えた方が記憶に残りやすくなる
仕事は完了させた状態で終えないとストレスにつながるので注意