- 人の気持ちを理解し、共感し、優しく反応する
- 人間は不完全な存在であるという認識
- 他人に優しくするように自分に優しくする
- 人が変わろうとするのは今のままでは無価値だからではない
- 受け入れがたい現実を受け入れることが優しさにつながる
- 参考論文、資料
思いやりとは?
前回は「セルフコンパッションの概念」について解説してきましたが、今回もより詳しく「セルフコンパッションの中身」と「心理学的に正しい思いやり方法」について解説していきます。
そもそも思いやりとはどのようなものでしょうか?他者を思いやるために必要な条件はあるでしょうか?
まず、誰かを思いやるためにはその人が苦しんでいることに気づかなければなりません。
苦しんでいる誰かを見て見ぬふりをしていては、その人の辛さを思いやることはできません。
人の気持ちを理解し、共感し、優しく反応する
次に、「思いやり」とは、相手の苦しみに心を動かされ、その苦しみに心が反応することです。
「思いやり」とは、文字通り、「相手の気持ちを想像して気を配ったり」、「相手と同じような気持ちを持つ」という意味です。
他者を思いやるとき、あなたは温かさや優しさを心に感じ、苦しんでいるその人を何らかの形で助けたいと思います。
また、「思いやり」とは、人が失敗したときに、それを厳しく裁くのではなく、理解を示し、優しさを与えることです。
人間は不完全な存在であるという認識
そして最後に、他者への思いやり(単なる同情や憐れみではなく)を感じるということは、苦しみや失敗、不完全さが人間が持つ共通体験の一部であることを理解していることを意味します。
つまり、「誰でも失敗したり悩むことはある」と思っているということですね。
自分に思いやりを持つことは、他人に思いやりを持つことと何ら変わりません。
他人に優しくするように自分に優しくする
セルフコンパッションとは、自分がつらい思いをしたり、失敗したり、自分の嫌なところに気づいたときに、自分に対して他者を思いやるのと同じように行動することです。
自分の痛みを無視したり目を背けるのではなく、「これは本当につらいことだ」「つらいなぁ」と自分に言い聞かせ、「どうしたら気分が楽になる?」と優しく寄り添います。
「~するなんて情けない!」というふうに自分の欠点を容赦なく批判するのではなく、「どうしたの?つらいことでもあった?」と個人的な失敗に直面しても優しく理解してあげることが大切です。
人が変わろうとするのは今のままでは無価値だからではない
失敗や挫折を経験すると、あなたはより健康で幸せになるために自分を変えようとするかもしれません。
しかし、それはあなたが自分自身を大切に思っているからであって、あなたが無価値であったり、今のままでは周囲に受け入れられないからでは決してありません。これを覚えておきましょう。
自分自身を思いやるうえで最も重要なポイントは、自分の人間性を尊重し、受け入れることです。
受け入れがたい現実を受け入れることが優しさにつながる
物事は常に自分の思い通りにいくとは限りません。挫折したり、失ったり、失敗したり、自分の限界にぶち当たったり、理想に届かなかったり、目標を達成できなかったりします。
これが人間として生きるということであり、私たち人間の誰もが共有できる現実です。
この厳しい現実と常に戦い続けるではなく、ときには心を開いて優しく受け入れます。
そうすることで、自分自身や親しい人たちに対して健全で正しい思いやりを持つことができるようになります。
次回は「セルフコンパッションを持つために必須のポイント」について解説していきます。
参考論文、資料
Neff K.D., Dahm K.A. (2015) Self-Compassion: What It Is, What It Does, and How It Relates to Mindfulness. In: Ostafin B., Robinson M., Meier B. (eds) Handbook of Mindfulness and Self-Regulation. Springer, New York, NY.
https://doi.org/10.1007/978-1-4939-2263-5_10
Kristin D. Neff, Tiffany A. Whittaker & Anke Karl (2017) Examining the Factor Structure of the Self-Compassion Scale in Four Distinct Populations: Is the Use of a Total Scale Score Justified?, Journal of Personality Assessment, 99:6, 596-607, DOI: 10.1080/00223891.2016.1269334
https://doi.org/10.1080/00223891.2016.1269334
Neff KD, Germer CK. A pilot study and randomized controlled trial of the mindful self-compassion program. J Clin Psychol. 2013 Jan;69(1):28-44. doi: 10.1002/jclp.21923. Epub 2012 Oct 15. PMID: 23070875.
https://doi.org/10.1002/jclp.21923
KRISTIN D. NEFF (2003) The Development and Validation of a Scale to Measure Self-Compassion, Self and Identity, 2:3, 223-250, DOI: 10.1080/15298860309027
https://doi.org/10.1080/15298860309027
セルフ・コンパッション―あるがままの自分を受け入れる 単行本 – 2014/11/26
クリスティーン・ネフ (著), 石村 郁夫 (翻訳), 樫村 正美 (翻訳)