クリエイティブが犯罪と結びつくとき
シラキュース大学のリン・C・ヴィンセントとノースウェスタン大学のマリアム・コウチャキ博士らの研究によると、創造性と非倫理的な行動との関係は、「創造性は稀なものである」という信念に依存していることがわかっています。
つまり、自分のクリエイティビティは特別なものだと思っている創造的な人ほど悪さをしやすいということです。
以前の解説では、創造的な人ほど非倫理的な行動(犯罪やズルなど)をしやすいという心理的な傾向があると話しましたが、創造的な人でも上記の信念を持っていない場合には悪いことをしないのです。
自分が特別な力を持っていると思っている人は2倍以上嘘をつく
この研究では、153人のMBAの学生を対象に、創造性を測定するために一般的に使用される単語連想タスクをさせました。
次に、3つのメッセージのいずれかが参加者にランダムに割り当てられました。
1)あなたは創造性テストで良い成績を残しました。そして、その創造性は稀で貴重なものです。
2)あなたは創造性テストで良い成績を残しましたが、その創造性は一般的なものでした。
3)あなたは創造性テストで良い成績を残しました(創造性についての言及はなし)。
その次に、お金の絡んだゲームをプレイするために別の参加者と匿名でペアになってもらいました。
彼らには、パートナーに真実のメッセージを送って、受け取るお金を減らす($ 2)か、嘘のメッセージを送って、自分が受け取れるお金を増やす($ 5)かを選択してもらいました。
すると、創造性は稀なものであると言われた参加者は、他の2つのグループの参加者よりもパートナーに嘘をついたのです。比べてみると、彼らは2倍以上も多く嘘をついていました。
周りに自分と同じ能力の持ち主がいない場合は態度が悪くなる
別の実験では、83組の従業員とその上司を対象に調査を行いました。
すると、自分が創造的なアイデンティティを持っていると思っていて、自分のように高い創造力を持った人がチームに稀な存在だと思っていた従業員は、ほかの従業員と比べて、倫理に反する行動をしがちだと上司に評価されました。
創造性が特別ものかつ周りに自分と同じような人材がいない場合には、態度が悪くなってしまうのです。このような場面はよく見かけるので、なんとなくわかりますね。
ということで、「創造性は特別なスキルだ」と思っている人はズルをしやすくなるという心理の解説でした。
とはいえ、クリエイティビティは今の時代で成功するために最も必要とされているスキルの一つです。
そこで次回は、従業員のクリエイティビティを高めつつ、彼らが悪さをしないようなメンタルづくりの方法を解説していきます。
参考論文
Lynne C. Vincent and Maryam Kouchaki(2014) Creative, Rare, Entitled, and Dishonest: How Commonality of Creativity in One’s Group Decreases an Individual’s Entitlement and Dishonesty | Academy of Management Journal, Vol. 59, No. 4