自尊心とは?
今回から連載で自尊心について詳しく解説していきます。
自尊心(self‐esteem, self‐respect, self-worth,self-regard, self-integrity)とは、自分に価値があると感じる気持ちです。
自分を高く評価していて、自分に対してポジティブな感情を持っている状態を「自尊心がある」「自尊心が高い」と言います。
自己啓発のテーマで最も多く語られるもののひとつですね。上記の英語の同義語を見ていただければわかりますが、同じような意味の言葉がたくさんあります。
ここでは自己愛、自己肯定感、自己価値、自尊感情、自己尊敬、自己尊重なども同じ意味として扱います。
自尊心の効果・メリット
人間としての価値に自信を持つことは、貴重な心理的財産の一つであり、一般的に人生においても非常にポジティブな要素のひとつです。
自尊心はまた、学業成績、達成感、結婚生活の満足度、良好な人間関係、幸福レベル、人生の満足感などの指標とも相関しています。
つまり自尊心が高いと、人生で起こるさまざまなイベントがうまくいきやすくなるのです。
そして逆に、自己評価が低いと、うつ病になったり、自分の能力を自由に発揮できなかったり、虐待的な人間関係や状況を受け入れて苦しむことになってしまいます。
自尊心の問題点・デメリット
しかし一方で、自尊心が強すぎると、不愉快な権利意識や、失敗から学ぶことができないという問題が生じてしまいます。
また、自己愛が強すぎると、自己中心的で傲慢になり、他人を操るような行動や攻撃的な態度をとったりと、ナルシシズムの兆候となることもあります。
単に「自尊心が高ければそれでうまくいく!」ということにはならないのですね。自尊心にもデメリットがあり、最も重要なのはそのバランスを保つことなのです。
そして、近年では、高い自尊心を持っていても学力や仕事の成果とはほとんど関係がないという結果も出ていまして、そこまで重要視されるポイントではなくなってきています。
自尊心と人間関係
自尊心の増減を決める原因のひとつは人間関係です。
家族、上司、友人、先生など大切な人から否定されることが多い人は、自尊心が低くなることがあります。
しかし、メンタルヘルスが健康な状態の人は、他者から不愉快な評価を受けてもそれを乗り越え、自分自身に対して抱く感情を改善することができます。
自尊心と年齢
また、個人の年齢も関係しています。生涯を通じて一人ひとりの経験は異なりますが、年を取るにつれて自尊心は決まった法則で増減していきます。
研究によると、自尊心は、程度の差こそあれ、60歳までは成長し、その後は安定した状態が続き、高齢になると低下し始めるとされています。
自尊心は、学業や仕事での成功、人間関係や精神的な健康など、人生に様々な影響を与えます。
しかし、先ほども述べた通り、自尊心は不変のものではありません。個人的なイベントでも仕事上の出来事でも、成功や挫折を経験することで、自尊心の感情は変動します。
自尊心が低くなる原因
自尊心が低くなる原因は何なのでしょうか?
自己価値の高低レベルは、多くの場合、子供の頃に決まります。
小さい時にあまり良くない家庭環境が長く続くと、大人になってからもその精神状態が続くことがあります。
自尊心の低さは、劣悪な学校環境や健全に機能していない職場が原因で生じることもあります。また、人間関係がうまくいかないと、自分に対する価値が下がってしまう可能性もあります。
つまり、多くの場合、私たちの自尊心はまわりの人間関係によって大きく左右されるのです。これをソシオメーター理論と言います。
中でも、家庭、学校、職場の3つの環境における人間関係が、自尊心の形成に大きな影響を与えています。
次回は「自尊心を高める方法」を解説していきます。
参考論文
Marsh, H. W. (1990). Causal ordering of academic self-concept and academic achievement: A multiwave, longitudinal panel analysis. Journal of Educational Psychology, 82(4), 646–656.
https://doi.org/10.1037/0022-0663.82.4.646
Baumeister, Roy F., Jennifer D. Campbell, Joachim I. Krueger, and Kathleen D. Vohs. “Does High Self-Esteem Cause Better Performance, Interpersonal Success, Happiness, or Healthier Lifestyles?” Psychological Science in the Public Interest 4, no. 1 (May 2003): 1–44.