混雑の心理学
人がたくさんいる方が人気が目に見えやすいので商売的にプラスなのかというとそうでもありません。
ディズニーランドが入場規制をするのはお客さんへの対応が遅れたり園内の良質な環境を維持できなくからです。
しかし、それだけではなく、混雑している状況は私たちの心理にも悪影響を及ぼすからです。
ですので、入場規制を行った方がいいのはディズニーランドのようなテーマパークだけではありません。
飲食店や家電量販店のような場所でもお客さんの数はできるだけコントロールしていきたいところです。
「ひとりで生きていけるふたりが、それでも一緒にいるのが夫婦」
「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、 私はあなたと結婚したいのです」という有名なコピーがありますが、実際に一人で幸せになれる人ほど恋愛がうまくいきます。自分が不幸な理由を他人に押し付けてはダメということです。
— 心理学博士ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2021年5月27日
混雑する場所は嫌われる
アメリカ、ノースキャロライナ大学で観光やレジャーについて研究しているアンダレック博士の調査によると、混雑のひどいところに観光しに行った人はその場所のことが嫌いになるという結果を示しました。
これは多くの人がうなずく結果ですよね。混雑した場所が好きな人はいません。少なくとも私はそんな人にはいまだかつてお目にかかったことがありません。
しかし、ここで重要なのは混雑という状態を嫌うのではなく、その場所を嫌いになってしまうところです。これはかなり勿体無い結果です。
私たちが心理的に混雑を嫌う理由は単純に混雑のせいで良質なサービスを受けられなくなるからです。
アトラクションや飲食店だとなかなか自分の順番が回ってこなかったり、こちらには用があるのにスタッフに声をかけても捕まらなかったりするとストレスが溜まってついイライラしてしまいますよね。
連合の法則で嫌われる
この問題が厄介なのは不快なイメージが下手をするとデート相手にも移ってしまうというところです。
心理学には「連合の法則」というルールがありまして、良いことがあるとそれと直接的には関係ないものでも好きになったり、嫌なことがあると何もかも嫌いになってしまうということが起こり得ます。
つまり、混雑している場所でのデートがつまらないのは場所が混雑しているせいというだけではなく、この人とデートしているからつまらないのだと相手に感じさせてしまう危険性があるんですね。
取材拒否のお店がある理由
こういった問題を回避するために飲食店には取材拒否のお店があったり、ミシュランなどのガイドブックに掲載するのを拒んでいるお店があります。それもすべてサービスの質が低下してしまうのを防ぐためなんですね。
いっときの人気で商売が繁盛しても、サービスの質が低下して常連客が離れてしまってはそのお店は長くは持ちません。ほとんどの商売というのはリピーターによって支えられているんですね。
また、噂話に乗せられて新規でやってくる面倒臭い態度のお客さんを防ぐという理由もあります。
こう言うと身もふたもないのですが、お客さんを選ぶのは商売を長生きさせるためには必須の条件ですからね。環境が豊かになるにつれて企業側から客層を選ぶといったビジネスは増えてきます。
適度に空いている場所は好かれる
また別の研究でも混雑状況がもたらす心理的な悪影響が発見されています。
ニューヨーク大学のエレン ランガー博士は20~45歳までの女性を被験者としてスーパーマーケットで買い物をしてもらいました。買い物をリストを彼女たちに渡してそれを買ってきてという簡単なミッションです。
その際にグループを二つに分けそれぞれに混雑度を変えて実験しました。片方のグループにはお店は空いている状況で買い物をしてもらい、もう片方のグループには2倍の客数という店の中が混雑している状況で買い物をしてもらったのです。
すると、空いているグループは快適に買い物ができたとショッピングの満足度が上がり、お店に対しても好印象を抱くということがわかりました。
買い物自体に満足するだけではなく、お店のことも好きになるというところが大きなポイントですね。
これを先ほどの連合の法則に当てはめると、「快適にデートを楽しめた!」→「この人と一緒にいると楽しい!」とこうなるわけです。当たり前なのですが、デートは楽しむに越したことはないんですね。
ちなみにこの「その場所で快適さを感じられるかどうか」にはパーソナルスペースの問題が関わっていきます。
知らない人が近すぎると辛く感じる心理
パーソナルスペースというのは、自分が安心して過ごせる空間の広さのことを言います。知らない人たちとの距離が近すぎることは私たちに心理的な負担があるのです。
不自然な距離感で近寄ってこられたら誰でも気持ち悪く感じてしまいますよね。多くの人にとって満員電車が辛いのは、主にこのパーソナルスペースの問題です。
つまり、これを逆に言うと、お客さんの十分なパーソナルスペースが確保できないために混雑しているお店は嫌われやすいのですね。
ですから単純にお客さんが多ければ多いほどお店にとって良いというわけではないということです。うーん、このへんの判断はお店の経営者にとっては難しいところですね。
しかし、店内の状況を最適化するのも大事な仕事のひとつなのは間違いありません。それもお客さんの満足度に影響することですからね。
お客さんを選び、その数を間引くことはお店とそれを利用する私たち双方にとってメリットがあるのです。
混雑が役立つときもある
ただし、人が混雑しているからこそ好きな人と密着できるというメリットもありますので、このへんのところは、デートの相手とどのくらい親密になっているかで印象が変わってきます。
混雑しすぎはつらいですが、多少の混雑であれば距離を縮めるのに役立ちます。
仲の良い恋人同士や、ある程度気心が知れた二人ならあえて混雑している場所でのデートを選び距離を近づけるもありということですね!
- 混雑のひどいとその場所のことが嫌いになる
- 空いている場所の方が満足度が高くなり、その場所のことも好きになる
- 連合の法則で、デートが楽しいと相手と一緒にいるのが楽しいのだと感じやすくなる