死んだ後も活性化する細胞
死後も細胞が活性化する!というリアルバイオハザードみたいな話です。
イリノイ大学シカゴ校(UIC)のジェフリー・ローブ博士らの研究によると、人間の脳みその特定の細胞は死後もしばらくは活動を続けており、一部はむしろ遺伝子発現と呼ばれる活性化現象を示し、成長さえするということがわかりました。
ゾンビ遺伝子と呼ばれる、死後に活性化する細胞は、脳内にある免疫細胞であるグリア細胞(神経膠細胞 – しんけいこうさいぼう とも呼ばれる)を、死後しばらくのあいだ成長させる作用を生み出していました。
グリア細胞は栄養素を運んだり、死んだニューロンを取り除くといった働きをしています。
ちなみに、ゾンビ遺伝子の存在は、2016年にワシントン大学の人間の血液や肝臓から採取した遺伝子を調べる研究によってすでに発見されていました。
これまでの科学的見解では、脳組織は、一時的とはいえども死後に遺伝子発現や細胞活動が活性化するとは考えられていなかったので、新しい道が開ける可能性があります。
実験中に分析した遺伝子の約8割は、死後24時間のあいだは比較的安定しており、遺伝子発現量もほとんど変化しませんでした。
記憶や思考といった脳活動に関わり、統合失調症やアルツハイマー病の研究にも重要とされる遺伝子群は、死後数時間で急速に分解されていました。
しかし、ゾンビ遺伝子は、ほかの遺伝子群が減少していくにつれ、その活動を活発化していました。
そして、死後12時間で活性度はピークに達し、少なくとも24時間は活性が観察されました。
今回の発見は、自閉症、統合失調症、アルツハイマー病などの治療法を見つける研究に役立つかもしれません。
参考論文
Dachet, F., Brown, J.B., Valyi-Nagy, T. et al. Selective time-dependent changes in activity and cell-specific gene expression in human postmortem brain. Sci Rep 11, 6078 (2021).
https://doi.org/10.1038/s41598-021-85801-6