早起きで能力が上がるのは少数派!
クロノタイプと早起きに関する話は何度か解説してきていますが、今の結論としては「早起きする人の方が少数派である」ということです。
これは「早起きができる健康的な習慣を持った勤勉な人が少ない!」という意味ではなく、「そもそも遺伝子的に早起きでパフォーマンスが高まる人は少ない!」という意味です。
私たちには「早起きできる人は偉い!」というような社会的な思い込みがありますが、実際には多くの人は早起きするをすると能力が下がるからやめた方がいいのです。
多くの人は午前8時前後に起きる
これは、おなじみ時間生物学の権威であるルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン校(ミュンヘン大学)のティル・ロエンバーグ博士の研究からわかったことです。
博士はミッドスリープ(中間睡眠地点)という測定法を生み出して、ヨーロッパの人たちの睡眠時間の分布を調べました。
このミッドスリープは睡眠時間の折り返し地点です。例えば、午後11時に就寝し、午前7時に目を覚ます場合、睡眠時間のちょうど真ん中にあたる午前3時がミッドスリープということになります。
そしてヨーロッパの人たちのミッドスリープの分布を調べたところ、人口の60%以上の就寝時間(休日)は、午前3時30分から午前5時30分の間に収まることが分かったのです。
つまり、多くの人の自然な起床時間は午前7時30分から午前9時30分のあいだということです。
早起きはそこまで役に立たない?
6時などの早朝に自然と起きる人は少数派だったんですね。多くの人は8時前後に起きるようです。
農耕社会では早起きは役立ちますが、私たちは歴史のほとんどを狩猟採集民として生きてきたので、早起きをする遺伝子がそこまで引き継がれなかったのです。
それにも関わらず、現代の社会生活は朝型の生活に合わせられています。これが問題であるとロエンバーグ博士は警告しています。
人口の半数以上は2~3時間の睡眠不足!
博士の調査によると、中央ヨーロッパの人口の40%以上が、遺伝的に正しい睡眠時間と2時間以上も離れた社会的時差ぼけに苦しんでいます。
さらには、15%以上の人の体内時間は3時間以上もずれているとのことで、これを3時間の睡眠不足と考えるとかなりマズい状況であることがわかります。
慢性的な疲労感とがん発症リスク
体内時計がずれることで、私たちは平日のあいだずっと慢性的な疲労感を感じてしまいます。
また、それ以外にもがんの発症リスクが高まるなど、体内時計の時差ボケは多くの健康被害を出してしまいます。
この研究では、ヨーロッパを対象にしていますが、博士はこの傾向は他の先進諸国でも同じような状況であると述べています。
早起きが奨励されるようになった理由
ちなみに、「なぜ遺伝子的に間違った時間に学校や会社が始まるようになったのか?」という答えについては、ニューヨークタイムズのベストセラー作家であるデイビット・K・ランドール氏が答えていまして、「朝に起きて農耕作業をすると、ちょうど9時ごろに暇になったから」だそうです。
つまり、今の学校の就学時間は農業文化の名残なのですね。会社の就業時間も、その流れで今の時間帯に落ち着いてきたのでしょう。
フレックスタイムは科学的には正しいのです。学校にも取り入れた方がいいでしょうね。
参考資料
The Science of Internal Time, Social Jet Lag, and Why You’re So Tired
https://www.brainpickings.org/2012/05/11/internal-time-till-roenneber/
Sleep and the Teenage Brain
https://www.brainpickings.org/2013/07/17/sleep-and-the-teenage-brain/