- プレクラスティネーションとは?
- 人はなぜか効率の悪い方をしまう
- わざわざ大変な方を選んでしまう心理
- プレクラスティネーションが起こる心理的理由
- とにかく楽をしたい人間心理
- とりあえず作業が進めば安心する心理
- 無駄なことをしていても本人は気づいていない
- プレクラスティネーションのための3つの対策
- 参考論文
先延ばし癖よりも怖い見切り発車の心理学
やらなければいけないことがあるのに、関係のないことを始めてしまって先延ばしをしてしまう、といったことは誰でもあります。
しかし実は、本人はしっかりと仕事をしていると思い込んでいて、先延ばしをしていることに気づいていないという恐ろしい心理が存在します。
その心理現象は「プレクラスティネーション(precrastination)」と呼ばれます。
これは「先延ばし」を意味する「プロクラスティネイション(procrastination)」から生まれた造語で、ちきちんと準備ができてないのに作業を進めてしまう心理現象のことです。見切り発車に近い心理ですね。
これは何も意志の弱い人間だけではなく、いつでも誰にでも起きる心理現象なのでそれだけ注意が必要です。
プレクラスティネーションとは?
プレクラスティネーションの心理は、2014年に行われたペンシルベニア州立大学心理学部のデビッド・A・ローゼンバウム博士の研究によって存在が確認されました。
この実験では、被験者に道の左側と右側にある2つの重いバケツのうちどちらか好きな方を選んでもらい、選択してもらった方のバケツを指定したゴールまで運んでもらうという作業をしてもらいました。
実はこの2つのバケツは条件が少し異なっていまして、具体的には次のような特徴がありました。
右にあるバケツは作業スタート地点の近くに置いてあるが、ゴールからは遠い
左にあるバケツは作業スタート地点の遠くに置いてあるが、ゴールからは近い
人はなぜか効率の悪い方をしまう
文章だけを見ると「あれ、これはひっかけ問題かな?」と思うかもしれませんが、そういう話でもなく、単純にゴール近くにあるバケツを選んだ方がバケツを持って運ぶときの移動距離は短くなり、それだけ運ぶための労力も少なくて済むというふうに設定されてます。
また、スタートに近いバケツを選んだ方が報酬が多くもらえるといった特典もなしで、バケツの運搬距離以外はどちらも同じ条件を揃えたわけです。
つまり、スタート地点の近くにあるバケツを選ぶメリットは何もないのです。すたすたとゴール近くにあるバケツのところまで歩いて、バケツを持ってそれをゴールまで運べばいいわけですから。
わざわざ大変な方を選んでしまう心理
普通に考えれば、誰もが後者のゴールに近い方のバケツを選ぶだろうと思います。
しかし、いざ実験を行ってみると、なんと意外なことに、多くの実験参加者たちはスタート地点近くのバケツを選んでゴールまで運んでしまったのです。不思議ですよね。
しかし、実は普段の私たちも、彼らと同じように、非効率的な選択を無意識のうちにしてしまっているのです。
このような非合理的な選択をしてしまう理由は、目標設定を単純にしてしまうという脳みその自動思考にあります。
プレクラスティネーションが起こる心理的理由
実験の説明を聞いた被験者たちの頭の中では、「バケツをゴールまで運ぶ」という最終的な目標をこなすために、まず「バケツを持たなければ」というサブゴールを無意識に設定してしまったのです。
これは、「できるだけ速く目標を達成するには、できるだけ速くバケツを手に取らなければいけない!」と、誤った解釈をしてしまうのが原因です。
わざわざ距離のことを考えるよりも、さっさとバケツをつかんで体を動かした方が、脳みその負担が軽く済んで楽ですからね。
とにかく楽をしたい人間心理
つまり、私たちは精神的な負担を減らすためなら、明らかに非合理な行動であっても無意識に選んでしまう癖があるということです。別の視点で考えると、脳みそは肉体的な負担よりも精神的な負担を嫌う傾向があるのですね。
すぐそばにあるバケツを手に取ることで、目標達成のためのToDOリストにより速くチェックを入れることができます。そのためなら、より身体的な負担が増えても構わないと考えるのです。
二次元には脳筋キャラがいたり、ゲームのプレイスタイルにも脳筋プレイというのがありますが、実はこれは本当にある心理現象です。””頭を使うのが苦手な人ほど””運動したり、とにかくやってみる!のが好きです。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2020年12月19日
とりあえず作業が進めば安心する心理
とにかく人間は作業が進んでいる感覚が好き!という話を過去にしましたが、どうやらその志向がここでエラーを起こしてしまっているようですね。
例えば、本当は今すぐプレゼンの資料の作成に取り掛からなくていけないのに、「とりあえずメールのチェックをしておこうかな」と重要度の低い仕事を始めてしまうような感じですね。苦手な勉強を後回しにする心理も同じですね。
無駄なことをしていても本人は気づいていない
しかし、この問題の本質は「本人が無駄なことをしていないことに気づいていない」のが大きな問題です。
要領が悪くてもとりあえず作業は進んでいるので、自分では「なぜ仕事が遅いのか?」という問題に気付けないですし、周りからも働いているふうに見えているので、ただ仕事が遅いだけの人間だと思われてしまうというリスクがあります。悲しいですね。。
プレクラスティネーションのための3つの対策
優先順位を見直す
こうした心理的な罠に陥らないためには、やるべき仕事の優先順位や重要性や生産性といったことを定期的にチェックする必要があります。
同じ作業を毎日行っていたらチェックする
また人間はすぐに楽をしてしまう生き物なので、もしも自分が頻繁に同じような簡単な作業を行っていたら、「これは本当に一番大切なことなのか?」と冷静に見つめなおすと良いです。難しいですね。
楽をするためなら人は無駄なことをしてしまう
今回の教訓は、とにかく自分には「精神的な負担を減らすためなら無駄なことすらしてしまう」というプレクラスティネーションの心理があることを覚えておきましょう。
この心理のせいで最終的に余計に疲れてしまっていては元も子もないですからね。用心してください。
参考論文
Pre-Crastination: Hastening Subgoal Completion at the Expense of Extra Physical Effort