ポジティブ思考はうまくいかないことがある
実はポジティブ思考は気分を良くするための万能なテクニックではありません。
良いことを考えていればハッピーな気持ちになって物事が良くなると考えがちですが、ポジティブシンキングをすることでかえって良くないことがあったり、中にはポジティブ思考そのものがうまく作用しない人もいます。
アメリカ人にはポジティブ思考がよく作用する
2011年にワシントン大学の心理学者チェンズン ルー博士は研究で、学生たちを集めてポジティブシンキングを行ってもらい、彼らの気持ちの変化を調べました。
すると、欧米人の学生はポジティブシンキングを行うで抑うつ状態から立ち直れたのに対し、アジア系の学生には何の変化も見られなかったのです。人種の違いで心理効果も変わってくるとは驚きです。
アジア系にはポジティブ思考は効果がない
この実験では、アジア系移民、アジア系アメリカ人、ヨーロッパ系アメリカ人のグループを含む633人の大学生を集めて、普段のストレスとうつ病の程度、悲しさを感じたり自分に価値がないと感じた頻度、睡眠や食欲の変化などといった彼らの様子を調査しました。
実験参加者の学生たちはまた同時に、落ち着き具合、喜び、自信、注意力といったポジティブな感情の強さも調べられました。
するとヨーロッパ系アメリカ人については、ポジティブな感情が多く感じているほど、抑うつ的な気分やストレスが少なかったのです。アメリカ人はポジティブシンキングをすることで気分が改善していたのですね。
しかし一方で、アジア系アメリカ人ではポジティブな気持ちが与える心理効果が薄く、さらにアジア系移民の場合になると、ポジティブな感情は抑うつ的な傾向やストレスに何の影響もありませんでした。
ポジティブ思考が効果を発揮しない心理的理由
このような心理的な違いが表れるのは欧米人とアジア人でポジティブなものに対する考え方や捉え方が異なるからです。
実験をした研究者たちによると、アジア人の典型的な反応として、彼らは幸せを感じている一方で不安も同時に感じていました。なぜ不安を感じているのかというと、嫉妬の感情を恐れているからです。
つまり、良いことがあったり何か大きな成功を手にすることで、他の人が嫉妬するかもしれないという懸念が同時に引き起こされるのです。
幸せになることを恐れているという感じですね。アドラー心理学っぽい話です。
なぜアジア人だけ幸せを恐れるのか?
アジア人だけポジティブ思考が利かない理由に関して研究者は、良いことの後には悪いことがあるという考えや、幸運は上がったり下がったりするものという考えを一般的なアジア人は持つ傾向があるからだと推測しています。
例えば、欽ちゃんの愛称で有名なコメディアンの萩本 欽一さんは、「運を使いすぎる」という表現で運には限りがあるという考えを持っていますが、こんな感じでずっと幸運なんてありえない!と私たちアジア人は考える傾向にあるからだということです。
その原因として研究者は宗教にあると指摘していますが、確かに宗教色が残っている文化の影響はありそうですね。知らず知らずのうちに私たちは幸せを遠ざける思考を持ってしまっているのかもしれません。
ポジティブ思考よりも受け入れる気持ちが重要
というわけで、私たちアジア人にとってはポジティブシンキングよりも、マインドフルネス的な思考の方が役立つと研究者は結論付けています。
つまり、良い気分も悪い気分も客観的に観察し、ただその気分が現れては消えることを感じるようにすることが、抑うつ的な気分の改善に繋がるのです。
下手に、明るく生きよう!とするのではなく、悲しい気持ちや不安な気持ちを受け入れて、それとは別に行動を選択するという感じです。このへんの感情コントロールはマインドフルネス瞑想を習慣的に行うことでだんだんとできるようになっていきます。参考にしてみてください。