- 大まかな正解を求めるためのスピード思考術
- ヒューリスティックの欠点とは?
- 利用可能性ヒューリスティックとは?
- 代表性ヒューリスティックとは?
- アンカリングヒューリスティックとは?
- 影響ヒューリスティックとは?
- 選択肢が多すぎると、意思決定が難しくなる
- 参考論文、参考文献
ヒューリスティックとは?
経済行動学におけるヒューリスティック(Heuristics)とは、問題解決をするときなど、人が何らかの意思決定を行うときに、無意識のうちに用いている手軽で迅速な思考のことを言います。
ヒューリスティックは、認知的な負荷が少ないために、判断に至るまでの時間は格段に短くなりますが、必ずしもそれが正しい判断となるわけではありません。
また、その判断結果には一定の偏り(認知バイアス)を含んでいることも多くあります。
大まかな正解を求めるためのスピード思考術
ヒューリスティックは正確ではないから必ずしも使えないということではなく、大まかな正解を求めるときに使われることで、より速く正しい判断にたどり着けるようになります。
たとえば、お化粧について聞くのなら、とりあえず女性を捕まえて話を聞けばいい、と多くの人が判断するでしょう。
女性が必ずしもお化粧について詳しいわけではないですが、この簡単な選択でほぼ正解にたどり着けます。
実際に人間が判断を下すときのほとんどはこのヒューリスティックを使っています。
ヒューリスティックの欠点とは?
認知的資源を節約するために、人は意思決定にヒューリスティックを用いることが多々あります。
しかし、先ほども言ったとおり、一般論や主観的な経験に基づくヒューリスティックスでは、限界があったり、判断が間違っていたりすることがあります。
その結果、人は、不完全な情報といい加減な考えに基づいて判断をすることになります。重要な決定ときにこれをすると後悔することになります。
たとえば、役職を決める際に、個人の能力や性格を調べるまえに性別だけでその人が適正かどうかを判断してしまうといったことです。
つまり、ヒューリスティックは状況によって使い分けることで効果を発揮するのです。
利用可能性ヒューリスティックとは?
利用可能性ヒューリスティック(availability heuristic)では、関連する情報をどれだけ簡単に思い出すことができるか(思い出しやすさ)で判断する傾向を指します。
最近経験したものや頻繁に目撃するものなどは思い出しやすいので、これが判断にも影響を及ぼします。
たとえば、買い物に出かけたときに商品の質を精査せず、CMでよく見かける商品を無造作に選んでしまうといったことです。
代表性ヒューリスティックとは?
代表性ヒューリスティック(representativeness heuristic)では、自分の経験が、他の分野でも同じように代表的な事象や可能性であると勘違いして、一般的に誤った判断をしてしまうことを指します。
たとえば、「女性に裏切られた経験がある人は、女性はみんな性格が悪いと感じてしまう」「前の職場でも性格の悪い上司がいたから、新しい職場でもそうだろうと思う」といったことです。
アンカリングヒューリスティックとは?
アンカリングヒューリスティック(anchoring heuristic)では、最初の情報をアンカーとして使用し、たとえそれが間違っていたり欠陥があったり無関係な情報だとしても、その情報をもとに他のすべての情報を判断してしまう心理を指します。また、これは単にアンカリングとも言います。
たとえば、コーヒーの値段を当てずっぽうで考えて推測するときに、「ちなみにこのシャツは2000円したんだ」と言われると、2000円を基準にコーヒーの値段を考えてしまうようになるなどです。
影響ヒューリスティックとは?
影響ヒューリスティック(affect heuristic)とは、自分の現在の感情に基づいて判断することです。
わかりやすい例が、嫌なことがあった直後では人は気分が悪くなって、仕事の質が落ちたり、そばにいる人にきつく当たったり優しくできない、などです。
また、逆に、気分が良くなると判断が甘くなり、普段なら許さないことを許してしまうといったことも起きます。
たとえば、株を買うときに、「自分の気分が良いから、きっとこの株も値上がりするだろう」と安易に考えてしまうなどです。
私たちは心の辛さと肉体の辛さを区別できないので、筋トレをしたり運動をして体を疲れさせると、気分が晴れるだけでなく悩みが自然と消し飛びます。落ち込んできたら体を動かしましょう!!!
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生@進化学と恋愛心理 (@kruchoro) 2020年12月14日
選択肢が多すぎると、意思決定が難しくなる
現実での暮らしでは、私たちは物事を決断するための時間が限られていることが多いです。
そのため、選択肢が多すぎると、合理的な選択ができなくなったり、いつまでも情報収集に時間をかけてしまうことがあります。
また、このように選択肢が多すぎると、意思決定の機能が麻痺したり、精神的に疲れたり、自分の選択に失望や不満を感じてしまうようにもなってしまいます。
そこで、私たちはヒューリスティックを無意識に使うことで、こうした問題が日常的に起きないようにうまく回避しているのです。
参考論文、参考文献
Kahneman, D. (2003). Maps of bounded rationality: Psychology for behavioral economics. The American Economic Review, 93, 1449-1475. DOI:10.1257 / 000282803322655392
Goldstein DG, Gigerenzer G. Models of ecological rationality: the recognition heuristic. Psychol Rev. 2002 Jan;109(1):75-90. doi: 10.1037/0033-295x.109.1.75. PMID: 11863042.
実践 行動経済学 Kindle版
リチャード・セイラー (著), キャス・サンスティーン (著), 遠藤 真美 (翻訳)
ファスト&スロー (上) Kindle版
ダニエル カーネマン (著), 村井 章子 (著, 翻訳)
セイラー教授の行動経済学入門 Kindle版
リチャード・セイラー (著), 篠原勝 (翻訳)