ストレスの良い面と悪い面
前回はストレスの種類と反応について解説しましたが、今回は「ストレスコーピング(ストレス解決法、ストレス対処・解消法)」について解説していきます。
意外に思うかもしれませんが、ただ悪者に見えるストレスにも実は良い面と悪い面があります。
ストレスの良い面、メリットとは?
ストレスの良い面には、適度なストレスは人を生き生きさせるという効果があります。
例えば、人は楽しいことがあるとワクワクしますが、これもストレス反応の一種です。ワクワクの度が過ぎると、緊張するようになります。
また、上手なストレス対処を増やし、不適切なストレス対処を減らすことで、私たちのストレス耐性はあがり、成長することができます。
ストレスの悪い面、デメリットとは?
ストレスの悪い面には、長く続くと抑うつが出現したり、身体的不調の原因となるといったものがあります。
また、ストレスがかかっている状況で不適切なストレス対処法をとってしまうと、大切なものを失ったり状況が悪化したりして、メンタルヘルスが損なわれてしまいます。
つまり、「ストレスは長引かせてはいけない」「不適切なストレス対処法を取ってはいけない」の2つが、悪いストレスによる被害を起こさせないポイントなのです。
ストレスを感じなくさせるのは不可能なので、ストレス対処法がメンタルヘルスのカギを握っています。
ストレスを解決する、回避する
ここからは正しいストレス対処法(ストレスコーピング)について解説していきます。
ストレスを感じたら、まずはその原因となっているストレス状況を解決したり、できるかぎりストレスを感じるような状況を避けていくようにします。
そして、それが不可能な場合、次善の策としてストレス反応を和らげていきます。
ステップ①:ストレス状況を解決する(問題解決法)、ストレス状況を避ける(問題回避法)
解決できるストレス状況は根本からすぐに解決するか、解決が難しい場合にはそのストレス状況を回避していきましょう。
例えば、寒い時は上着を着る(解決法)、失敗が多い時は足りないスキルを身につける(解決法)、相性の悪い人からは距離を取る(回避法)といった感じです。
まずは、ストレス状況を自分で解決できないかを考えて、解決できない場合、その後で回避する方法を探すという感じです。
ストレスをすぐに解決できないときの対処法
しかし、ストレスを解決したり回避することも困難な場合が現代の生活には多々あります。
嫌いな人が上司である場合、上司と付き合わないようにする!という回避法はあまり役には立たないでしょう。かと言って、上司を変えてもらったり会社を変えることは容易ではありません。
上記のように、問題の解決に時間がかかる場合や、ストレス状況がさけられない時にはステップ②に移り、次のように行動していきましょう。
ストレスに対処する
ステップ②:ストレス反応を和らげる(ストレス対処法)
ストレスのもととなる状況を解決・回避できない場合には、ストレス対処法を試していきます。
ストレス対処法によって、行動や考えを変えることで心と体の反応(ストレス反応)を軽くすることができます。まさに現代に必須のスキルと言ってもいいでしょう。
ストレス対処法の一例を以下に挙げておきます。
- 体を動かす(運動):散歩をする、バッティングセンターに行く、カラオケに行く
- リラックス法(リラクゼーション):好きな音楽をきく、アロマをたく、お茶をする、深呼吸をする
- 視野を広げる(認知再構成法):昔のことを思い出す、相手の立場に立ってみる、他の人はどうかと見渡す、はげましの言葉や名言を読む
- 気分転換(行動活性化):映画を見に行く、友達と話す、おいしいものを食べる
- 「今・ここ」に集中する(マインドフルネス):まわりの景色を見渡す、まわりの音に聞き入る、瞑想する
ストレス対処法の種類は主にこの5つです。これらの種類の中から役に立ちそうなものや興味のあるものを優先して実践していきましょう。
自分だけのストレスコーピングリストをつくる
ストレス対処法を実際にやってみたら、次に、うまく効果が発揮されたストレス対処方法をリストアップしておきましょう。
これをストレスコーピングリストと言います。ストレスに悩んだ時や困った時には、そのリストの中から好きなものを選んでストレスに対処することができるようになります。
ストレスコーピングリストは多ければ多いほど良いです。100個のストレスコーピングリストがつくれるように、ストレス状況に遭遇するたび知識と経験を蓄積させていきましょう。
気分によってストレス対処法を最適化する
また、そのときの気分やストレス反応によって、ストレス対処法を変えて最適化することもおすすめです。
例えば、落ち込んでいるときには散歩などの軽い運動が良いかもしれませんし、イライラしているときには逆に筋トレなどの激しい運動がより効果的かもしれません。
また、趣味に没頭し活動的になった方がいい場合もあれば、リラクゼーションを行って気分を落ち着かせる方がいい場合もあります。
不安な時、悲しい時、腹立たしい時、イライラした時などそれぞれの気持ちのときに特に効果のあるストレス対処法を探してみましょう。
上手なストレス対処法とは?
最後に、上手なストレス対処法について解説していきます。
いくらその方法でストレスに対処できるからと言って、後で後悔したり長期的に見て自分を苦しめるようなストレス対処法を取っていてはいけません。
余計に自分を苦しめてしまわないように、良いストレス対処法と悪いストレス対処法のポイントをここで理解しておきましょう。
上手なストレス対処法には、次の特徴があります。
- 自分や他人を傷つけない:自分や他人を傷つけてしまっては余計に苦しんでしまうようになります。
- お金がかからない:大金をつぎ込んだり家計を圧迫するほどの費用が掛かるものは新たなストレスの種になります。
- 問題解決のさまたげにならない:例えば、痩せようとしているのにお菓子を暴食するストレス対処法を取ってはいけません。
ストレス対処法を探したり試すときには、この3つのポイントを踏まえているかどうかもきちんと分析してから行いましょう。
次回は、「人間関係の悩みを解決するためのアサーション・トレーニング」について解説していきます。
参考論文、資料
第6回 ストレスに対処しよう(ストレスコーピング)
http://npsy.umin.jp/~npsy/cgi-bin/wordpress/wp-content/themes/tokyo_univ/pdf/nyumon6.pdf
Ganesan, Yosindra. (2018). A Study on Stress Level and Coping Strategies among Undergraduate Students. Journal of Cognitive Sciences and Human Development. 3. 10.33736/jcshd.787.2018.
https://doi.org/10.33736/jcshd.787.2018
Al-Dubai SA, Al-Naggar RA, Alshagga MA, Rampal KG. Stress and coping strategies of students in a medical faculty in malaysia. Malays J Med Sci. 2011 Jul;18(3):57-64. PMID: 22135602; PMCID: PMC3216229.