【ASD・ADHD】実行機能に関する問題と対処方法について解説

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実行機能の障害が起こす問題

 

今回は実行機能の解説の続きです。

 

自閉症やADHDのように実行機能の障害を抱えていると、次のような場面で問題が起こる可能性があります。

 

  • コミュニケーション
  • 計画を立てる
  • 日常的な作業
  • 衝動性を制御する
  • 特定のものに注意を向ける
  • 言語的推論
  • 思考の硬直化

 

また、これらの作業が苦手!というふうに考えることもできます。それぞれ順番に解説していきます。

 

コミュニケーション

 

実行機能は、特に会話中に情報を保持することが困難な場合、コミュニケーションに問題を抱える一因となる可能性があります。

 

また、衝動制御力の欠如もあいまって、不適切なことを言ってしまったり話を聞けない傾向が強くなることによって、対人コミュニケーションにネガティブな影響を与えることがあります。

 

たとえば、相手の話についていけなかったり、相手とかみ合わない話をしてしまうといった問題が起こりる可能性があります。

 

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計画を立てる

 

自閉症の人々にとって、計画を立てることそれ自体がとても困難です。

 

計画を立てようとしてもすぐに手の付けられない状態になってしまい、自分に管理可能な方法も、やるべきことを実行する方法もわからずに苦労することがあります。

 

また、大きな目標を達成するために必要なタスクを分解して組み立てることも困難に感じる場合があります。

 

やるべきことがたくさんあるだけで、もう頭がパニックになって何もできなくなってしまうという感じです。

 

たとえるのなら、一般人に相対性理論の論文を読んでもらうようなイメージです。事前知識のない人では、論文が手元にあってもおそらく何のヒントも得られないでしょう。

 

日常的な作業

 

起床、着替え、朝食の準備、家事など、日常的な作業を遂行するにはワーキングメモリーが必要です。

 

しかし、自閉症の人の多くは、事実や知識については驚くほどの記憶力を持っていますが、ワーキングメモリーに依存するタイプの活動を行うことは苦手で、大きな困難を伴います。

 

そのため、子供でもできるようなこと、大人ならできて当然に思えるようなことすらも難しく、ときにはまったくできません。

 

そのせいで、彼らはだらしない性格なのだとほかの人に誤解されやすいです。

 

衝動性を制御する

 

衝動のコントロールがうまくいかないと、不健康な行動や自己破壊的な行動につながりやすくなります。

 

例えば、自閉症の人は、新しい発見や面白そうな趣味を見つけたとき、それを研究をすることに熱中して無意識に徹夜してしまいます。

 

好きなことに没頭しすぎることもまた、衝動制御力の欠如が原因となります。いわゆる「過集中(Hyperfocus)」ですね。

 

ADHDを持つ人にも同じような症状があらわれます。

 

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特定のものに注意を向ける

 

自閉症の人は集中する能力が高いことが多いのですが、その集中力を適切な方向に向けることは苦手で、注意力のコントロールに困難さを感じてしまいます。

 

例えば、感覚に問題がある場合、時計の音や頭上の照明の強さに集中してしまい、話しかけてくる人やもっと重要な情報には注意を向けることができないかもしれません。

 

この特徴がコミュニケーションの問題を引き起こしてしまう場合もあります。

 

ゲームで言うと、攻撃力は高いのに命中率が低い武器を装備しているよう感じですね。

 

ドラゴンクエストにおける「まじんのかなづちを装備した戦士」をイメージするとわかりやすいです。

 

言語的推論

 

自閉症の人は、言葉の概念を理解し処理するのに苦労することがあります。

 

たとえば、インタビューのような口頭でのコミュニケーションで、相手の話すことの内容や真意を読解することが苦手なのです。

 

このような能力を「言語的推論力(Verbal reasoning)」と言います。

 

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思考の硬直化

 

自閉症の人は、自分の考え方を変えることが難しい場合があります。

 

そのため、新しい状況に適応することが難しく、硬直的で変えられない意見を持ってしまうことがあります。

 

柔軟に考えることが苦手で、頑固な性格になりやすいのです。

 

自閉症の症状への対処法

 

ここまで紹介してきたような実行機能の問題は、自閉症者にとって、スペクトラムのどの位置にいても、人生に対処することを非常に難しくします。

 

しかし、ASDの症状に悩む人が子供であっても大人であっても、実行機能を補助することはできます。ための戦略を開発することができます。

 

例えば、やることリストを作ったり、大きな仕事を管理しやすいステップに事前に分解したり、時には視覚的なものを使ったりフローチャートを使うことで実行機能の弱点を補うことができます。

 

実行機能に依存しなくても適切に行動できるシステムを導入し、それらをルーティン化することで、締め切りや状況がギリギリの段階になるまでタスクを放置するようなことがなくなります。

 

 

実行機能の問題に対処するときのコツ

 

ある人は、朝食を作るのが億劫で、そのせいで気力がなくなり、不安な気持ちになるという問題を抱えていました。

 

そこで、朝食を前日に準備しておくことで悪い状況を大きく改善することができました。

 

シンプルで、先回りしていて、日常的なステップが、実行機能の問題に関しては大きな変化を生み出してくれます。

 

まずは、どんなに簡単に見えるものでも、自分にとっては難しい作業なのだと認識しましょう。

 

そこから始めることで、ASD症状を抱えていても、生活の質を向上させることができます。

 

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参考論文

 

Diamond A. Executive functions. Annu Rev Psychol. 2013;64:135-68. doi: 10.1146/annurev-psych-113011-143750. Epub 2012 Sep 27. PMID: 23020641; PMCID: PMC4084861.

https://doi.org/10.1146/annurev-psych-113011-143750

Chan RC, Shum D, Toulopoulou T, Chen EY. Assessment of executive functions: review of instruments and identification of critical issues. Arch Clin Neuropsychol. 2008 Mar;23(2):201-16. doi: 10.1016/j.acn.2007.08.010. Epub 2007 Dec 21. PMID: 18096360.

https://doi.org/10.1016/j.acn.2007.08.010

Hughes C, Russell J, Robbins TW. Evidence for executive dysfunction in autism. Neuropsychologia. 1994 Apr;32(4):477-92. doi: 10.1016/0028-3932(94)90092-2. PMID: 8047253.

https://doi.org/10.1016/0028-3932(94)90092-2

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