内向性が高くなる原因
今回は「内向性」についての解説の続きです。今回は脳科学と生理学的なアプローチから内向性について見ていきましょう。
なぜ世の中には思慮深く内向的な人と、考えるよりも行動が大事な外向的な人とがいるのでしょうか?
このことをきちんと理解するためには、人間の体の生理機能が果たす役割を先に理解することが重要です。
外的な刺激や環境に対する肉体の反応は、人の外向性と内向性のレベルを決定するのに重要な役割を果たしています。
網様体賦活系とは?
生理的なレベルでは、脳幹にある網様体賦活系(もうようたいふかつけい、Reticular Activating System, RAS)と呼ばれる神経細胞のネットワークが、興奮する度合いや睡眠と起床に関する覚醒レベルの調節を担っています。
たとえば、ジェットコースターに乗ったときにどれくらい興奮して楽しめるかや、睡眠と起床のコントロールをこの部位が決めているわけですね。
「興奮して眠れない!」という問題も、実は脳みその同じ部位が興奮と睡眠を調整しているから起きることなのです。
情報量の調整もしている
また、網様体賦活系は、私たちが起きている間に取り入れる情報量をコントロールする役割も担っています。
たとえば、物事の細かいところまで気にするのか、大雑把にとらえて良しとするのかを決めているわけですね。
さらに、環境中の潜在的な脅威に直面すると、網様体賦活系は覚醒レベルを上げ、危険に対処するための準備を整えます。
危険な目に遭うと心臓がバクバク、ドキドキしますが、これも網様体賦活系が脳内の覚醒レベルを上げているからです。
このように網様体賦活系は日常の覚醒レベルを調節しているため、ここが異常をきたすと神経障害を患ってしまうことにもつながります。
多様性はスパイス
多様性とは料理のスパイスのようなものです。スパイスは料理の味をより引き立てます。しかし、スパイスが多い方が好みの人もいれば、少ない方がいいという人もいます。スパイスに過敏な人は、多様性が持つ刺激に耐えられません。多様性を簡単に社会に導入できないのはそのためです。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2021年9月9日
興奮しやすさは脳によって異なる
そして重要なことに、2017年のアーカンソー医科大学とピッツバーグ大学の研究によると、この覚醒レベルの基本的なセットポイント(どのくらいの刺激で興奮するのか?)は人それぞれに異なっていることがわかっています。
なので、ある人は自然にセットポイントが高くなり、ある人はセットポイントが低くなる傾向があります。
つまり、興奮しやすさが人によって違うので、たとえばジェットコースターに乗ったときにスリルを楽しめる人もいれば、落ちていくときの感覚やハイスピードの刺激が強すぎてストレスや恐怖になってしまう人もいるわけです。
絶叫系が好きな人もいれば嫌いな人がいるのはこのためだったんですね。
というわけで、興奮してきたら「網様体賦活系が活性化している!」と考えてみましょう。これに特に意味はありませんが、もしかすると気持ちが落ち着くかもしれません笑。
参考論文
Garcia-Rill E, Virmani T, Hyde JR, D’Onofrio S, Mahaffey S. Arousal and the control of perception and movement. Curr Trends Neurol. 2016;10:53-64. PMID: 28690375; PMCID: PMC5501251.