神経症的傾向が存在する理由
今回は「神経症的傾向の解説」の続きです。
神経症的傾向は、文化圏を越えて人類に普遍的に見られることがわかっているため、その存在には生物学的な起源があると考えられています。
実際に、危険や脅威に対して過敏に反応する(神経症的傾向が高い)ことが生存に有利に働くという説を進化学者が挙げています。
また、神経症的傾向が驚愕反射と相関している可能性を示す証拠も見つかっています。驚愕反射とは、大きな音に反応することです。
この関連は、神経症の度合いが高い人は、外からの刺激に対してより強く反応するように遺伝的に仕向けられている可能性を示唆しています。
つまり、神経症的傾向が高い人ほど音などの刺激に対しても人より敏感になるということです。HSPみたいな感じですね。
神経症的傾向のメリット
神経症傾向は私たちの行動にどのような影響を与えるのでしょうか?
神経症傾向が引き起こす行動には、ポジティブなものとネガティブなものの両方があります。つまり、良いこともあれば悪いこともあるのです。
先に述べたように、神経症傾向はネガティブな結果やリスクに注意を払う傾向があるため、個人が成功したり生き残ったりするのに役立ちます。
例えば、神経症的傾向のレベルが低く、ネガティブな感情がうまく管理できている場合、学生は高い学業成績をおさめやすいということがわかっています。
これは神経症傾向のポジティブな側面ですね。
神経症的傾向のデメリット
一方で、神経症的傾向が高く、ネガティブな感情がうまく管理できない場合、行動に悪影響を及ぼす可能性があります。
最悪の場合には、神経症的傾向の高さが、うつ病や不安症などの二次的な精神的問題を引き起こすようになってしまいます。
こちらは神経症傾向のネガティブな側面です。
精神疾患にかかりやすい
実際の研究でも、神経症的傾向のスペクトラムが高い人は、うつ病、不安症、物質乱用(アルコールや薬物などを乱用すること)などの精神障害のリスクが高いことがわかっています。
フローニンゲン大学などが過去に行われた17の研究をレビューした2013年のメタ分析では、さまざまな臨床的精神障害が、神経症的傾向のレベルが高いことと関連していることが示されています。
イライラしたり不安になっているときには、脳みその前頭連合野という部位が活発に働いています。また一方で、感覚刺激に対する情報も操作しています。なので、集中力が必要な作業をすると今度はそちらに活動コストが持っていかれ、ネガティブな思考ができなくなります。不安になったらプラモをつくろう
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2022年1月10日
神経症的傾向が精神障害につながる理由
一般的に、神経症的傾向のレベルが高い人は、起きた出来事や状況に対して素早く覚醒して反応し、ベースラインレベル(元の状態)に戻るのにも長い時間がかかります。
なので、そのぶん情緒が不安定になりやすく、その結果、自分の行動をコントロールするのが難しくなって問題を起こしやすくなってしまうのです。
神経症的傾向のレベルが高い人は、一般的な人よりもストレスの閾値が低くストレスを頻繁に感じやすいため、自分の感情をコントロールするのにもより工夫が必要となるのです。
参考論文
Ormel J, Jeronimus BF, Kotov R, et al. Neuroticism and common mental disorders: meaning and utility of a complex relationship. Clin Psychol Rev. 2013;33(5):686–697. doi:10.1016/j.cpr.2013.04.003