人が直感に頼ってしまう心理学的な理由
直感(直観)というのは意外と有能だというのは、実は心理学界では有名な話です。
もちろん、本来ならきちんと考えることで正解に導ける問題なのに、バイアスやヒューリスティックによって間違った選択や思考をしてしまうことは危険なのですが、考えてもよくわからないような問題には直感が有効です。
例えば、「この人は嘘をついていますか?」など一般人には難しい内容の場合は直感の方がよく当たったりします。また十分な情報が集められないときなども最初の直感に頼る方が好ましい選択をしやすいです。
直感は意外と当たるし、正しい
どうして直感に頼ることを推奨するのかというと、私たちは意識して物事を解決しようとするとあまりに考えすぎてまうことで、かえって正解から遠ざかってしまうからです。
アメリカ、ヴァージニア大学のティモシーウィルソン博士も、「人間は考えすぎると、質の悪い決定しかできなくなる。直感的に、パッと選んで行動した方が、はるかによい決定ができる」と警告しています。
考えることが悪いのではなく、考えすぎることで思考力が低下してしまうのです。このへんは不安や緊張への対処法とも似ています。
私たちは何でもないことや大したことないでも、そこに意識を過度に集中させてしまうがために「人に見られている」ですとか「失敗したらやばい」とネガティブに考えてしまうのです。
考え過ぎると失敗する
しかし実際には、自分自身を含めて私たちは他人にそこまで注意を払っていないことが研究の結果からもわかっています。
視界に入ったり出会うたびに他人のことを考えていたら、何も作業ができなくなってしまうので、普段の私たちはそこまで他人の振る舞いに気を配っていないのです。
ゲームだと考えると能力が上がる
これもまた不思議な話のですが、「これはテストです」と聞かされた場合と「これはゲームです」と聞かされた場合では、ゲームだと聞かされた人たちの方がテストの成績が良くなったりします。
無駄な力が抜けて本来の力が発揮できるようになるのです。
要するに気を張り詰めることによって、本当はヒントにすらならない事柄に対しても「何かあるんじゃないか?」と可能性を見出してしまうがために私たちはあれこれと考えてしまって、その結果、選択に時間がかかったり、選択自体に失敗するということが起きてしまうのですね。
人の嘘は直感の方が見抜ける
これは、アメリカのデンバー大学で行われた人の嘘を見抜く実験でも同じ現象が確認されています。
この実験では、会話中に嘘をついている人たちと嘘をついていない人たちの動画をそれぞれ見せて、どの人が嘘をついているかを動画を見た人に判断させたんですね。
このとき、時間をかけて動画を見た場合には当てずっぽうで決めたのと変わらない正答率だったのですが、たった17ミリ秒の間だけ会話している人の顔を映して瞬間的に判断してもらったときの場合は嘘を見抜く確率が上がったのです。
どうやら私たちには無意識に相手が嘘をついているかどうかわかるようです。
直感が当たる脳科学的な理由
このような結果になるのは、私たちは意識的に考えようとすると、意味のない情報のノイズが頭の中で思考を邪魔してしまうからです。
そのせいで正解とは程遠いことを考えてしまうのですが、無意識や直感に頼ることで脳みそが自動的に余計な情報を排除してくれるので正答率が上がるという仕組みです。
考えてもわからないことは直感に頼る
とはいえ、最初にも言いましたが、この直感の力は、論理的に考えてもよくわからないことに限ります。
何でもかんでも直感で物事を決めてしまうとバイアスという偏った思考の錯覚のせいで、差別的な傾向が出たり、選択に失敗しているのに気づかなくなることが起こり得ますので注意してください。