話す内容よりも伝え方の影響力が大きい
相手の心を動かしたければ、言葉の中身よりもその伝え方が重要です。
気持ちを伝えたい相手とすでに親密な関係を築けているのであれば、相手はあなたの話をじっくりと聞いてくれますし、伝え方が多少言葉足らずであっても、これまでのあなたとの付き合いや経験から推測して理解しようと努めてくれますし、それでうまくいくことも多いです。
しかし、初対面の人やそこまで親密な関係を築けていなかったり仕事上の顧客相手となると、中身よりも伝え方が相手の気持ちを変える上で大きな影響力を持つようになります。
私たちが持つ時間や話を注意深く聞くためのエネルギーは有限ですから、印象が悪かったり要領を得ない伝え方だと相手は即座に私たちに興味を失ってしまいます。
話題と場所選びは大切
例えば以前話した心理学研究だと「話のネタに何を選ぶかだけでイメージが変わる」という話をしました。私たちは相手が頭の中で何を考えているかよりも、実際に相手の取っている行動や言動によって相手の性格や思考を理解しようとします。
話題によっては、伝える場面選びも重要です。ポジティブな内容とネガティブな内容では伝え方が違うだけではなく、話を伝えるのに適した場所も違うのです。
それくらいイメージの影響力は強力なものだということです。
というわけで、今回は「印象を良くし、説得力も上がる気持ちの伝え方」に関する心理学研究を中心に引用しながら話をしていきます。
イケメン、美女からの説得
魅力的な人からの推奨は、強力な説得術となります。
痛み止めの薬に関する広告を、推薦者の顔写真を変えてその評価に対する調べたところ、魅力的な顔つきの人が推薦しているときほど商品の印象も好ましく評価されることがわかりました。
特に人気のある有名人が、短い時期に頻繁にCM等の宣伝に使われるのはこのためですね。これはノース ダコタ大学のパッツァー教授の心理学研究からわかったことです。
「最近この著名人をいろんなところで見るな〜」と思ったら、この心理効果に騙されていないか注意が必要です。
魅力的な人は信用されやすい
この心理効果は、以前に紹介した連合の法則の一種です。見た目が魅力的な人から勧めはそうでない人よりも信頼されやすく好意的に受け止められやすいです。
例えば、素敵な人に話しかけられて舞い上がってしまった経験はありませんか?
そんなふうにして気分が良くなると、私たちは相手の言葉に説得されやすくなるのです。「こんな素敵な人が言うんだから、まぁいっか〜///」ってな感じですね。
ハロー効果、派手色効果
この魅力的な見た目の人が言ったりやったりすることは信頼できると思い込む心理効果をハロー効果と呼びます。有名な心理効果ですね。
また香港大学のゴーン博士の研究によると、色彩、彩度、明暗のはっきりした広告は好意的に評価されやすく、彩度の高い広告は見た人を興奮させることがわかっています。
これも見た目に派手なものを見せて相手の気分を高揚させて、楽しい錯覚を起こさせているという理屈ですね。
逆ハロー効果
逆に見た目が魅力的でない人は、残酷な事実ですが、仕事ができないという烙印を押されてしまいます。これは逆ハロー効果とも呼べる心理効果ですね。
つまり、私たちは自分たちで思っている以上に見た目やイメージによって相手の印象や評価を決めてしまっているということなのです。
専門的なイメージは強力なアピールになる
専門家の人が推奨する製品ほど商品の購買率が高まります。
テキサス大学ポーマー博士とオレゴン大学カーレー博士の共同研究で、化粧品の広告をスキンケアのコンサルトという専門家の人が登場する場合と、化粧品とは何の関係もない職業の人が登場する場合とを作って比較してみたところ、専門家の登場する広告の方が見た人は買ってみたいと思うことがわかったのです。
まぁ当たり前といえば当たり前です。素人よりも専門家の方が知識や経験が豊富ですから、彼らの方がより正しい判断や評価が下せます。安心感や信頼感が全然違いますよね。
専門家の言葉を鵜呑みしてしまう心理
しかし怖いのは、私たちが専門家の言っている内容を検討せずに鵜呑みにしてしまう傾向があることです。
専門家の言葉や行動に盲目的に従ってしまうということは、その心理を利用されると損をするということです。理屈の通っていないことでも信じてしまう可能性があるということですからね。
よくあるのはポジショントークというやつですね。重要な決断の際には一人の専門家の言葉だけを信用して決定を下すのはあまり良くないかもしれません。
具体的な数字のマジック
ワシントン大学国際ビジネス学科のヤルチ博士の研究によると、具体的な数字を使うと説得力が上がることがわかってます。
数字の提示は、このブログでもおなじみです。
もちろん、このブログでは別に読者を騙そうとしているわけではなく現実的な効力を知ってもらうために載せています。なので論文に数字が書かれている場合は、なるべくその数字を載せています。その方が読んでいる方もイメージが掴みやすいのです。
わかりやすく内容を伝えるために数字を使う
「成功した人がたくさんいました」では、人によって「たくさん」の基準が違いますから、誤解も生じやすくなりますし、人によっては「たくさんってどれくらい?」とまったく想像できない人もいます。
しかし、「50%の人たちが成功しました」とあれば、半分の人が成功したのだとわかります。自分で試す際にも成功率を想定しながら実践できるので分析もしやすくなります。
「一回失敗したけれど、50%の成功率だからとりあえずもう一回くらいはやってみよう」と計画が立てることができるのです。
このように事前に計画や対策を立てるは目標達成のためには重要なポイントです。ただし、これにも注意が必要な場合があります。
例えば、テレビ番組とかでたまにひどいものが、アンケートの母数がすごく少ないのに「80%の人たちが〜」と言ったりしています。こういう母数のマジックには気をつけましょう。
想像力をかきたてて興奮させる
カリフォルニア州立大学のレヴィ教授の心理研究によると、想像と期待を超えるものや広告は興味を引き、好意的に評価されることがわかっています。
面白いとされる映画がトレーラーやCMの状態では謎に包まれているのもこのためです。何が起きるのか(あるいは何が起きたのか)と想像しながら物語を進めていくのは私たちの好奇心を強くくすぐるのですね。
好奇心は人の原動力となりますので、広告やアピールの道具として使われやすいです。そして、ストーリーというのは誰にとってもわかりやすい説得術になるのです。
ミステリー系が人気の理由
つまり、最後まで注意して見ないとどんなものかわからないものは注目を集めやすいのですね。
レヴィ教授の実験では、被験者にさまざまな広告を見せてみたところ、ミステリアスな物語に載せた広告が一番人々の注目を集めたそうです。
あえて最初にがっかりさせる
また、あえて最初に相手をがっかりさせておくのも相手からの高い心理評価を作り出すために有効な手段です。
これはファントムデコイテクニックと呼ばれています。使い方がちょっと難しいんですけどね。
この心理テクニックは期待に応えれないとひどくガッカリされるという諸刃の剣でもあります。CMで見て楽しみにしていた映画を見に行ってガッカリした経験は誰にでもあるかと思います。
以上がアピールテクニックのまとめです。広告のマジックには気をつけましょう。ではないと、お金がいくらあってもたりませんからね。