イメージ次第で人の行動や習慣は変わる
私たちの頭の中にあるイメージの力は強力です。
私たちは自分でも意識できないレベルで、頭の中にあるイメージに行動を決定されています。
ですので、イメージの力を利用することでやりたいことができるようになったり、やりたくないことを抑えられるようになったりと、生活習慣の改善に有効活用することができます。
この意図的なイメージを作り出して、自分や相手の行動や習慣といったものに影響を与える心理効果をラベリングと呼びます。
名前の書いたラベルやシールを貼り付けるように人の性質を決めてしまうので、こう呼ばれています。
9割の人を動かしたラベリングテクニック
アメリカ、ノースウェスタン大学のリチャード ミラー博士は、ラベリングがもたらす心理効果について調べてみました。人の心にイメージを付帯したラベルを貼ることで、その人の行動や性格にどこまで心理的な影響が出てくるのかを実験して調査したのですね。
ミラー博士は小学校5年生の子供達のクラスを無作為に選び出し、さらにそれらを2つのグループに分けました。
片方のクラスの子供達には担任の先生から「身の回りを整理整頓し、ゴミを片づけることの大切さ」を話してもらいました。
こちらは心にラベリングされなかった対照群のグループですね。ただ話を聞かせるだけです。学校や会社などでよくある、一般的なパターンですね。
そして、もう片方のクラスの担任の先生には「みんなは本当にキレイ好きね」と、ことあるごとに子供達に伝えるということをしてもらいました。こちらがラベリングされたグループです。
ちなみに、このときは、子供達が実際に掃除をしていたわけでも、キレイ好きな様子を見せたわけでもありません。
つまり、子供達が過去にどんな性格だったかも、子供達が実際にどんな行動を取っていたのかも関係なく、ただ彼らに「キレイ好きだね」と教師の方から積極的に伝えるようにしたのです。
すると、教師がそのようなラベリングを子供達に行うようになってから、87%の生徒たちが自分から率先してゴミを拾うようになったのです。
これはすごい暗示効果ですよね。実際にはその行動をやってもいなかったのに関わらず、理想的な行動を褒められるようになってからやるようになったのですから。
ラベリングの心理効果の強力さがよくわかる内容だと思います。
ただ話を聞かせるだけでは効果が薄い
一方でそのようなラベリングを受けなかった生徒たちのクラスでは、自らゴミを拾う生たちの数は27%と、ラベリングを受けた生徒と比べて三分の一以下という数値でした。ラベリングを受けたグループと受けなかったグループとでかなり大きな差が出ましたね。
面白いのが、この数字が、以前話したお説教の効果のなさを証明した実験とほとんど同じ数値なんですよね。こちらの実験では大学生が対象となっております。
つまり、人にお説教をしたり、物事や考え方の大切さをとうとうと本人たちに語ったとしても、三人に一人の割合でしかその話をまともには受け入れてくれないということです。
実際の数字は33%以下なので、厳密には三人に一人も真面目に聞いてくれません。
お説教をする側というのはそれなりに気持ちが入っていて、相手への思いもきちんとあったりする場合が多いのですが、話を受け取る側としてはありがた迷惑でしかないようです。これは基本的には誰でもそうです。
辛いですね。自分が説教おじさん、説教おばさんにならないように気をつけましょう。
第三者を挟んでも効果がある!
このように相手に期待をかけるラベリングの心理効果は、ピグマリオン効果とも呼ばれ、別の研究者の実験でも効果の存在が認められています。
アメリカの教育心理学者であるロバート ローゼンタールは、このピグマリオン効果を証明すべく、今度は対象者に子供たちではなく大人である教師たちを選びました。
というより、実は時系列的にはこちらの心理学の実験が先ほどの実験の元になっております。
こちらの実験では、成績とは関係なく適当に生徒たちを選び出し、その生徒たちについて担当の教師たちに「この子たちは優秀ですから成績もどんどん伸びますよ」と伝えました。
すると、教師たちから期待をかけられた子供達は本当に成績が伸びてしまったのです。すごいことですよね。
「子供達は褒めて伸ばそう!」と、世間でよく言われる所以は、この心理実験が元なのかも知れません。
しかし、実際に大切なのは、成績などの結果ではなく、努力のプロセスですので、褒める箇所を間違えないようにしましょう。
#子ども を褒めるときは成績や賞与などの結果ではなく、努力の過程を褒めてあげると良いです💡
結果を褒めると、ズルをしてでも結果を求めることが大切だという価値観が生まれてしまい、子供達自身の自信も損なわれます😵
逆に結果に繋がった努力の過程を褒めることで、正しい努力の仕方を学びます💪
— 心理学博士ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2019年2月27日
人にも自分にも期待をかけよう
というわけで、教育者やお子さんがいる方は子供達に期待をかけるのがおすすめです。誰だってバカにされるよりも褒められる方が嬉しいに決まってますからね。
また、このラベリングの心理テクニックは相手だけではなく、自分自身に対しても効果を発揮しますので、自分が目指す理想像のラベリングをすることで行動が改善されやすくなります。思い込みは力なんですね。
とはいえ、人に対しても子供に対しても自分に対しても、失敗には寛容でないとダメです。期待はするけれど、失敗してもいい。そこだけ注意してください。
また以前にも話しましたが、過度な期待や目標設定も禁物です。このへんの扱いについては色々な心理学を組み合わせることで柔軟に対処できるようになります。
ラベリングは約9割の割合で人の行動を変える
お説教は三人に一人以下の行動しか変えられない
ラベリングは他人から聞かされた場合でも有効
ラベリングは自分自身に聞かせる場合でも有効
期待はしながら、同時に失敗には寛容に