アンカリングの心理効果とは?
アンカリングとは認知バイアスの一種であり、先行する何らかの数値(アンカー、錨)によって後の数値の判断が歪められ、歪められて判断された数値が先に示されたアンカーに近づく傾向が出てしまう心理現象のことです。
日本語では、係留(効果)と呼ばれることもあります。アンカリング効果、アンカー効果、または調整ヒューリスティックとも言います。船が停泊するときに錨を下すイメージからきています。
似たような心理効果でプライミングやフレーミングといった同じような認知バイアスを利用した心理テクニックもあります。こちらも先に提示された情報から心理的な影響を受けてしまい、回答者の答えが変わるというものです。
関係ない情報でも心理操作される
アンカリングの恐ろしいところは、後続の情報とはまったく関係のない情報であっても心理的な影響を受けて判断が歪んでしまうことです。
プリンストン大学名誉教授である行動経済学者のダニエル・カーネマン博士とスタンフォード大学のエイモス・トベルスキー博士のが1974年に行った研究で、このアンカリングの心理効果が確認されています。カーネマン博士はこの一連の研究でノーベル経済学賞を与えられています。
アンカリングの実験
例えば、研究では以下のような質問をして、先に提示された数値に後の答えが左右されるかどうかを見ました。
(2) 実際の割合は何%くらいですか?
ここで先行提示された数値(アンカーとなる情報)は、質問(1)に書かれた65%です。これによって質問(2)の答えとなる数値が歪められるかどうかを調べたのです。
すると、質問回答者は先に示された65%という数字に引っ張られてしまい、質問(2)の答えは45%付近の数値になることがわかりました。
この数字がアンカリング効果で操作されたことを証明するために、質問(1)の数値を65%から10%に置き換えてみると、質問(2)の答えが25%付近になることもわかっています。
大きな数字から計算すると答えも大きくなる
さらに、別の実験では、「8×7×6×5×4×3×2×1」と「1×2×3×4×5×6×7×8」という計算を5秒以内に推測してもらうと、後者(中央値512)よりも前者(中央値2250)のほうが推測値が大きくなることが示されました。
これも大きな数字から計算を始めたために答えが引っ張られてしまった結果です。