内発的・外発的動機づけ
実は好きでやっていることに過剰な報酬が用意されると、私たちはかえってやる気がなくなってしまいます。
このある作業を好きな気持ち、あることに対する興味関心を内発的動機付けと呼びます。これとは別に作業それ自体に興味はなくても、その作業をすることでメリットがあって行動している場合には外発的動機付けがある状態と呼びます。
この内発的動機付けと外発的動機付けは一緒になると、お互いに効果を打ち消しあってしまい、作業に対するモチベーションが下がってしまうのです。
この心理現象を説明する研究があります。
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お金をもらうとやる気が無くなる
アメリカのロチェスター大学で心理学を研究するディシ博士は、大学生を実験の対象に、キューブ型の立体パズル(ソーマキューブと呼ばれるオモチャ)を解いてもらう課題を出しました。
その際にグループを2つに分け、パズルの課題に正解するたびにお金がもらえるグループと、正解してもお金がもらえないグループとをつくりました。
そして、それぞれのグループにパズルの課題をこなしてもらい、ある程度時間が経った後で休憩時間を挟みました。
すると、お金をもらったほうのグループは、お金をもらわなかったグループに比べて、課題の後の自由時間にパズルで遊ぶ時間が短かったのです。
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やる気がなくなる心理的な理由
お金をもらった大学生は、金銭的報酬を得てしまったことで、立体パズルに対する関心を失ってしまったのです。
この心理現象は、過剰な正当化効果(アンダーマイニング効果)と呼ばれています。もともと好きでやっていたあることに対して余計な賞与(外発的な理由)を与えることで、その行動をとることの理由が過剰になり、行動に対するモチベーションを失ってしまうのです。
好きでやっているから、興味があるからと言う内発的動機付けで本人が努力している場合には、追加であげるご褒美はマイナスに作用してしまうのです。
また、子供の教育に関しても、子供本人が好きでやっている作業に対して余計な報酬や褒め言葉を与えないように気をつけなければいけません。
子供本人が「この作業は褒められるためにやっているのだ」と考えるようになってしまうと作業に対する興味を失ってしまうからです。物によるご褒美も同じ理由でよくありません。
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好きでやっていることを褒めてはいけない
これは直感とはズレてしまうことですが、本人が好きでそれを行なっている場合には、一生懸命勉強していたりスポーツなどの練習をしていても褒めてはいけないのです。
また、好きでやっていることを褒めても本人が対して喜ばない心理もここにあります。彼らにとってはそれが当たり前なのですね。
つまり、本人にとっては作業の後に報酬があるという認識ではなく、作業することそれ自体が報酬になっているのです。これが内発的動機付けの特徴です。
なので、もしも子供や部下が自分から積極的に行動しているときには余計な報酬を与えずに黙って見守ってあげましょう。
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作業がつまらない場合にはご褒美は効果がある
しかし、内発的な動機付けがなく、作業それ自体に興味がない場合には、外発的な動機付けとして本人が喜ぶご褒美を用意してあげて、そのご褒美を作業の報酬として与えるということを提案してあげると良いです。
アンダーマイニング効果とは逆に、ご褒美や賞与によってやる気が出てくる心理現象をエンハンシング効果(現象)と呼びます。
プレゼントや報酬は相手の心理に合わせて調節する必要があるのです。とにかくただ相手を褒めたり褒美をあげれば良いというものではないのですね。気をつけましょう。
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