説得するならポジティブな言葉を使うと良い
実はある状況においてはネガティブな言い回しよりもポジティブな言い回しを使う方が、相手をより説得しやすくなることがわかっています。
基本的には人間心理というのはネガティブな情報に強く反応するように作られているのですが、ネガティブな言葉は相手の気持をより保守的なものにしてしまうという特性があります。
なので、新しい行動を促したり挑戦を求めているときには、ネガティブな言葉による説得は逆効果になってしまいやすいのです。
伝え方を変えるだけで話の印象が大きく変わるというのは何度か話してきていますが、今回はポジティブな情報の伝え方がもたらす心理効果について解説していきます。
上司や先輩などの権力を持っている人を説得する必要がある人は今回の心理学を参考にして説得にあたってみてください。
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ポジティブな言葉に説得されやすい心理
アメリカ、クリーブランド大学でマネジメントを教えているケネス デュネガン博士の研究から、人はポジティブな文句に説得されやすいということがわかっています。
ポジティブな言葉で情報を伝えることで情報に対する印象が変わり、明るい伝え方をされた人たちは説得内容に対して楽観的な気持ちになって説得されやすくなるのです。
まさに伝え方が結果を変える好例となる心理学研究です。
デュネガン博士の実験では、ポジティブとネガティブな報告の2種類のプロジェクトの結果報告を用意し、それを聞いた被験者がプロジェクトへの追加投資を許可するかどうかを調べました。
具体的には「現在進行中の50のプロジェクトのうち、30は成功しています」というポジティブな表現と、「現在進行中の50のプロジェクトのうち、20は失敗しています」というネガティブな表現が用意されました。
割合としてはどちらも60%の成功率で同じ確率なのですが、成功した情報だけを伝えた場合と失敗した情報だけを伝えた場合で反応が変わるのかどうかを調べたのです。
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結果は同じでも伝え方を変えるだけで説得効果が高くなった
普通に考えると、どちらも成功率は同じなので追加投資をするかどうかの判断も変わらないかのように思えます。
しかしこうして伝え方を変えた結果、ポジティブな表現で報告を受けた人たちは、ネガティブな表現で報告を受けた人たちよりも追加投資することを多く認める傾向があったのです。
成功情報を聞かされた被験者は「投資はうまくいっている」というイメージがつかみやすくなり、楽観的に考えるようになったのです。逆に失敗情報を聞かされた被験者は「投資はうまくいっていないのだ」というイメージを抱いて悲観的な思考になったのです。
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言い方を工夫するだけでイメージは逆になる
「ものは言いよう」とはまさにこの研究結果のことを指すのでしょう。人間の脳みそはもともと数字を扱うのが苦手だということもありますが、こうして言い方を少し変えるだけで結果がまったく逆の状態に変わってきてしまうのです。
同じ内容の話でも伝え方を変えるだけで印象は180度変わり、意味も真逆のものになります。ポジティブに伝えられた内容にはポジティブなイメージが、ネガティブに伝えられた話にはネガティブなイメージがつくようになるのです。
こうした伝え方一つで受け取るイメージが簡単に変わってしまうので、それに対する判断や評価も真逆になってしまうのです。
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心は表現の仕方に騙されやすい
よくメディアによる情報の切り取り方が問題視されていますが、これは切り取られた情報によって評価やイメージが180度変わってしまうからなのです。
というわけで、もしもあなたが情報を見て決断を下す時には、情報の伝え方や順番に気を配り、ニュートラルな目線で評価をするようにしましょう。
今回の実験のようにポジティブな言い方とネガティブな言い方の両方をしてみて、両方の側面から物事を見つめてみるのも良い手です。
そして人を説得する必要がある人は、今回の心理学を参考に、ポジティブな言い方とネガティブな言い方をうまく使い分けて交渉に挑んでみてください。
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