うがいの研究論文は少ない
風邪やウイルス感染予防策として、手洗いうがいは昔から大切とされてきました。確かに手洗いは感染予防策としてかなりの効果が認められています。
しかし一方で、実はうがいに関しては信頼のおける科学的なデータがあまりないという状況になっています。これだけ日本全国、老若男女問わず根付いている習慣なのに意外ですよね。
ただし一応、うがいをすると風邪に罹りにくいという研究結果はあります。根拠は少ないけれど今のところ存在する論文を見る限り効果はありそうだ、という感じですね。
なので科学的には、手洗いほど大事!というわけではないのです。
うがいで風邪の発症率が大幅に下がる
京都大学健康科学センターで公衆衛生学の研究をしている里村一成教授、川村孝教授らの2005年の研究では、うがいを行うことで風邪に罹るリスクが減少するという結果が出ています。
この実験は18-65歳の健康な男女387人を対象に行われました。年齢層も幅広く、参加者も多い規模の大きな実験です。
まず参加者たちをうがいの仕方を変えた3つのグループ(水でうがい、うがい薬でうがい、何もしない)に分けて、体調にどんな変化が起きるのかを60日間観察したのです。
すると、単純に水でうがいをするだけでも風邪の発症率が大幅に下がることがわかったのです。水でうがいをしていた人たちは、数字にしてなんと40%も風邪の発症率が下がっていました。これはかなり効果が大きいですね。
うがい薬の使用は逆に効果が下がる
さらには、意外なのですが、うがい薬を使うより水だけでうがいをしたほうが風邪に罹りにくいという結果にもなったのです。
うがい薬を使うことで予防効果が薄れてしまった原因は、殺菌力にあると考えられています。つまり、うがい薬の高い殺菌効果で、咽喉の粘膜を傷つけてしまって予防効果をなくしてしまっているという感じです。薬の使用は殺菌力が強すぎるのですね。
一番重要なウイルス対策は手洗い
とはいえ、うがいの研究はまだまだデータが少なく発展途上です。やらないよりはマシかもくらいの軽い気持ちでうがいをしていきましょう。
アメリカ疾病管理予防センターでも、感染予防としては手洗いを推奨しています(マスク、うがいは非推奨)。
というわけで、科学的には風邪やウイルスの感染予防には手洗いが一番なのですが、手洗いと合わせてうがいを行う場合には、うがい薬を使ったり過度にうがいをして咽喉の粘膜を傷つけないようにしましょう。やりすぎは良くないのです。