暴力ゲームは暴力を助長するのか?
最近は無料で気軽に遊べるゲームが増えてきましたが、ゲームが心理的に良いのか悪いのか、あるいは関係ないのか、という議論は長年されてきました。今回はその中から一つの研究を紹介します。
実は、ゲームイベントの内容や個別のプレイヤーが持つゲームキャラクターに対する認識によって、ビデオゲームが人に与える心理効果は変わってくることがわかっています。
つまり、たとえ内容が暴力的なゲームであっても、プレイヤーがプレイするゲームキャラクターが道徳的な性格のヒーローであった場合は、暴力を助長するようなことは起きないのです。
悪役で遊ぶと暴力的になる
有名なゲームキャラクターを操作することが、ビデオゲームがもたらす暴力的な効果に影響を与えるかどうかを調べた実験があります。
これは2013年にルクセンブルク大学のクリスチャン・ハップ博士とアンドレ・メルツァー博士らが行った研究で、60人の学生たちに「モータルコンバットvsDCユニバース」という、ヒーローとヴィラン(悪役)が戦うPS3の格闘アクションゲームをプレイしてもらったのです。
その際、被験者の半分にはプレイキャラクターにスーパーマンを選んでもらい、残り半分にはジョーカー(バットマンの悪役)を選んでゲームをプレイしてもらいました。
すると、ジョーカーを使ってゲームを遊んだ学生は攻撃性が高まってしまったのです。悪役に感化されて暴力的になってしまうとは、なんともわかりやすい結果ですね笑。
ヒーローで遊ぶと道徳的で優しい性格になる
一方で、スーパーマンを使ってゲームをした学生たちは、攻撃性が下がり、地面に落ちている落とし物を拾って届けてくれる確率が高くなったのです。ヒーローを使ったことで道徳的に正しい行動をするようになったのですね。
具体的には、スーパーマンをプレイした学生たちは、他人の顔を見た時に相手が攻撃的だとか敵対的だと感じにくかったのに対し、ジョーカーをプレイした学生たちは相手が自分と敵対しているという感情を感じやすかったのです。
悪に染まると他人が敵に見える錯覚が起きる
どうやら私たちは悪に感化されてしまうと、他人がすべて的に見えてしまう魔法がかかってしまうようです。この心理効果のために人は暴力的な行動をとるようになってしまうのです。
というわけで、ゲームをプレイする際にはこの心理に気を付けてプレイキャラクターを選ぶというのが道徳的に正しい選択となります。とは言っても、悪役をプレイするのも同じように楽しいのでやはりバランスでしょうね。
悪役で遊びすぎている人は他人が敵に見える錯覚に陥ってしまい、こうなるとメンタルの健康にも良くないので、そこだけ気を付けてください。格闘ゲームでも十分感化されてしまうということで、人間は思っている以上に単純なのです。