幸福感を増す心理術
2008年に行われたバージニア大学心理学部のミンギョン・クー博士とノースカロライナ大学チャペルヒル校心理学部のサラ・B・アルゴ博士らの研究によると、ある方法を取ることで簡単に幸福感を増すことができると分かっています。
その方法とは、幸せな出来事が実は起きていなかったと考えることです。この説明だけではちょっとよくわからないと思うので、補足していきます。
ポジティブな出来事を想像の中で失ってみる
博士らは4つの心理実験を行い、合計231人の学生と88人のオンライン回答者を対象に、まず最初に過去の人生で起きたポジティブな出来事を思い浮かべてもらいました。
過去に起きたポジティブになる出来事というのは、例えば、試合に勝ったですとか、大学受験に受かったとか、恋人ができたとかです。嬉しかった出来事ならなんでも大丈夫です。
もしもポジティブな出来事がすんなりと出てこない場合には「自分がこの世に生まれてきた!」というような誰にでも起こることを思い浮かべてもらいました。
そしてそのあとで、その出来事が実は起きていなかったと頭の中で想像してもらったのです。ちょっと不思議な実験ですよね。
幸福度がアップしてカップルの仲が良くなった
すると、この思考実験を1日1回、全部で2週間に渡って実践した被験者は、1カ月後も気分の高揚感が続いて、幸福感を抱き続けることができたのです。
またこれはカップルの親密度を上げる効果もありまして、恋人との出会いがなかったかもしれないと書いた人は、相手とどのように出会ったかについて書いた人よりも二人の関係に満足するようになったのです。
この心理効果は「素晴らしき哉、人生!」で同じような想像をした主人公から取って、ジョージベイリー効果と呼ばれています。
ジョージベイリー効果が起こる心理的理由
これは損失回避という心理が関係しています。私たちには喜びや楽しさといったポジティブな感情よりも、悲しみや苦しみといったネガティブな感情のほうを強く感じやすい心理があるので、わざとネガティブな発想をすることで幸福を感じられるようになるのです。
つまり、たとえ空想であってもマイナスの基準点を与えて、人生に良いことがないと考えると、実際に起きた良い出来事はさらに良く見えるようになるということです。比較することでより良い特徴が際立つようになるのですね。
さらに、ポジティブなイベントが発生しなかった可能性があることを考えることで、良い出来事があったことがより貴重に思えるようにもなります。とにかく今の状態に価値と幸福を感じられるようになるということです。幸せとは気づきなのです。
嫌なことを否定するのではなく幸せを否定する
私たちは否定的な出来事に対しては「こんな風にならなかったらなぁ」と考えるのですが、これでは逆効果です。また、肯定的な出来事の後にはこうした考えは持ちにくいですが、むしろこちらのほうが効果的です。
そこであえて反事実を考えることで幸福度を高く維持することができるのです。この思考によって幸福度が長く維持できるのもポイントですね。
というわけで、ポジティブなことを考えるのが苦手で暗いことばかりを考えてしまいがちな人は、今回紹介した反事実的思考の心理テクニックを使って幸せを感じ取ってみてください。