- 黒人の赤ちゃんの死亡率は白人の赤ちゃんの2倍
- 黒人の赤ちゃんの生存率が低い理由
- 人種の不一致で黒人の赤ちゃんの死亡率は3倍に
- 人種の一致でコミュニケーションが増える
- 無意識下の人種差別
- 日本に比べてアメリカの乳児死亡率は4倍
- 参考論文
人種の違いで生存率はまったく違う
差別は時に無意識のうちに行われます。また、これは個人の問題だけにとどまらず、社会の構造にも影響された結果起こります。
例えば、白人か黒人かという違いだけで、生まれてくる赤ちゃんの生存率も変わってしまいます。
これはアメリカの場合ですが、黒人の赤ちゃんの生存率は、担当医師が黒人だった場合は非常に高くなるというデータが出ています。
逆に担当医師が黒人以外になってしまうと生存率が大きく下がってしまうのです。
黒人の赤ちゃんの死亡率は白人の赤ちゃんの2倍
先に説明したようにアメリカでは、黒人に限らず、有色人種の赤ちゃんは白人の赤ちゃんに比べて医療現場における成果がかなり悪くなっています。
米疾病対策センター(CDC)が2017年に行った調査によると、母親の収入や教育レベルにかかわらず、1歳の誕生日を迎える前に死亡する黒人の乳児の割合は白人の乳児の2倍を超えることがわかっています。
私たちは生まれた直後から人種差別の問題とぶつかるのです。
黒人の赤ちゃんの生存率が低い理由
赤ちゃんの生存率にこのような格差が生まれた背景には、構造的・社会的な人種差別、少数民族が受けるストレスの強さ、少数派が社会経済的に不利な立場に立たされてしまう環境など、複数の理由が関係しています。
また、2020年に行われたジョージ・メイソン大学のブラッド・グリーンウッド准教授の研究によると、治療に関わる医師の人種も重要なカギを握っていることがわかっています。
研究者らは1992年から2015年にかけて米フロリダ州の病院で生まれた新生児180万人の記録を調査し、それぞれの新生児を担当した医師の人種を確認しました。
人種の不一致で黒人の赤ちゃんの死亡率は3倍に
その結果、白人の医師が担当だった場合、死亡した黒人の新生児は白人の新生児の約3倍にも上がっていたことがわかりました。一方で、黒人の新生児を黒人の医師が担当した場合にはこの格差は半減していました。
また、死亡する新生児が最も減ったのは難産の事例で、他の人種より比較的多くの黒人の新生児の出産を扱っている病院でした。
つまり、医療従事者が黒人と多く触れ合っている病院ほど人種差別が少なくなって死亡率も下がるということです。当たり前のように感じますが、けっこう大事なのですね。
人種の一致でコミュニケーションが増える
どうして黒人の乳児の死亡率に人種の一致がここまで影響を及ぼすのかについてはまだわかっていないことが多いのですが、これにはどうやらコミュニケーションの問題が関係しているようです。
同論文の共著者であるジョージ・メイソン大学のブラッド・グリーンウッド准教授は、人種が一致していると、医師と母親の間で信頼関係が増してコミュニケーションが取られやすくなることを指摘しています。
担当医師が黒人の場合、新生児のケアに重要な社会的なリスク要因や問題が起きた時の対応が優れているのではないかと考えています。
無意識下の人種差別
また白人医師による黒人の女性患者や乳児への無意識の人種差別も関係している可能性も指摘されています。私たちはリベラル派であってもどうしても無意識に差別をしてしまうので、これは仕方ないのですが。
また、白人の新生児の場合、医師の人種による生存率にはほとんど差がないこともわかっています。
アメリカ医科大学協会(AAMC)によると、アメリカの医療従事者の割合は白人が圧倒的に多く、黒人はわずかに5%しかいないとのことで、黒人がリスクを最小限にするために黒人医師を見つけるのは非常に難しい状況だそうです。
日本に比べてアメリカの乳児死亡率は4倍
ちなみアメリカの2017年の乳児死亡率は、出生1,000人あたり5.79人であり、2016年の5.87人と統計的にはほぼ同じ結果になっています。日本は出生1,000人あたり1.9人です。
こうして比べてみると、日本はかなり安全に赤ちゃんが産める国なのだとわかりますね。
参考論文
Physician–patient racial concordance and disparities in birthing mortality for newborns
https://doi.org/10.1073/pnas.1913405117
Infant Mortality in the United States, 2017: Data From the Period Linked Birth/Infant Death File