リターントリップ効果について
以前「リターントリップ効果」について解説しましたが、今回はその続きです。
リターントリップ効果を簡単に説明しますと、旅行の行きよりも帰りの方が早く感じられる心理効果です。
実際には同じ距離・時間を移動しているのにもかかわらずこの心理現象が確認されるので、不思議だと思われているのです。
リターントリップ効果は帰宅したときだけに起こる
そして、リターントリップ効果について調べた2015年の京都大学の実験によると、私たちは旅行から帰った後で往復にかかった時間の感覚を変化させている!という可能性が示唆されています。
つまり、旅行中の往復感覚は正常でも、家に着いた途端に「帰り道の方が早かった!」と錯覚してしまうのです。
より不思議な展開になってきましたね。
過去を振り返った時に記憶の改ざんが起きている
この研究では、20人の男性のグループを対象に、人が歩いているだけの2つの映像を見てもらいました。
2つの映像は、往路と復路、または2回とも往路という内容です。そして視聴後と視聴中に、かかった時間の長さを推定してもらいました。
以前の研究と違うのは視聴中にも時間感覚を聞いたところです。
すると、視聴後に往復にかかった時間を聞かれた人だけにリターントリップ効果が発動したのです。一方で視聴中のグループにはリターントリップ効果は現れなかったのです。
つまり、私たちは後で旅行を振り返った時に記憶を捏造して帰り道の方が短く感じるようになっているのです。不思議ですね。
「帰り」というラベルが認知バイアスを起こす?
また、往路と復路の映像を見たグループの参加者だけが、復路の方が往路よりも時間がかからないと感じました。これは以前の研究結果と同じですね。
どうやら帰り道というイメージが私たちに「帰りは短い、早く帰れる」という認知的な歪みをもたらしているようなのです。
なので、もしかすると、「帰り」や「往復」といったラベリングが認知的なバイアスを起こす可能性もあります。
なんとも不思議な心理ですね。これに近い心理で言うと、古い時の記憶ほど良いものだと感じる「思い出補正」ですかね。
いずれにせよ、私たちは自分たちの過去の思い出すら正確に思い出せないのです。
参考論文
Ozawa R, Fujii K, Kouzaki M (2015) Correction: The Return Trip Is Felt Shorter Only Postdictively: A Psychophysiological Study of the Return Trip Effect. PLOS ONE 10(7): e0133339.