セルフコンパッションに必要なものとは何か?
前回は「心理学的に正しい思いやり方法」について解説してきましたが、今回は「セルフコンパッションを持つために必須のポイント」について解説していきます。
次の3つは、セルフコンパッションを構成する重要な要素です。
- 自分への優しさを持つ(自己批判をしない)
- 共通の人間性を持つ(孤立する考えを持たない)
- マインドフルネスになる(過剰な同一化をしない)
順番に解説していきます。
自分への優しさを持つ(自己批判をしない)
失敗は避けられないことである
セルフコンパッションとは、自分が苦しんだり、失敗したり、不完全だと感じたりしたときに、その痛みを無視したり、自己批判で自分を責めたりするのではなく、自分自身を温かい気持ちで理解することです。
自己への思いやりを持てる人は、不完全であること、失敗すること、人生の困難を経験することは避けられないと認識しています。
なので、もしも苦しい経験に直面しても、理想に届かない人生に腹を立てるのではなく、自分に優しく接することができます。
現実の否定は自己批判につながる
理想の自分になれなかったり欲しいものが手に入らなかったりなど、人生は自分の思い通りにならないことが多々あります。
この現実を否定したり、抗ったりすると、ストレスやフラストレーション、自己批判などの形で苦しみが増していきます。
現実を否定するのではなく思いやりと優しさをもって受け入れれば、感情に平静さが訪れ、安らかな気持ちになれます。
共通の人間性を持つ(孤立する考えを持たない)
誰もが不完全で苦しんでいる
物事が自分の思い通りにならないことへの苛立ちは、まるで世界で自分だけが苦しんでいるかのような孤独感を伴うことがあります。
しかし、人間はみな苦しんでいます。人間とは、いつか死すべき存在であり、傷つきやすい心と体を持ち、不完全な存在です。
セルフコンパッションとは、そうした苦しみや個人の不完全さは、「自分だけに特有のもの」ことではなく、「誰もが経験するもの」であり、人間が持つ共通体験の一部であることを認識することなのです。
マインドフルネスになる(過剰な同一化をしない)
他人と関連付けられた大きな視点で物事を見る
セルフコンパッションではまた、感情が抑制されたり誇張されたりしないように、ネガティブな感情に対してバランスのとれたアプローチをとることも必要です。
ネガティブとポジティブのバランスのとれた姿勢は、状況をより大きな視点でとらえるプロセスから生まれます。
そして自分の経験を、同じように苦しんでいる他の人の経験と関連づけることで、今の状況をより大きな視点でとらえることができるようになります。
ネガティブな思考や感情をありのままに観察する
また、自分のネガティブな思考や感情をありのまま明確に観察し、マインドフルな意識を持つことが大切です。
マインドフルネスとは、思考や感情を抑制したり否定したりすることなく、ありのままに観察する、判断力のない、受容的な心の状態です。
私たちは、自分の痛みを無視しながら同時にその痛みに思いやりを示すことはできません。
同時に、マインドフルネスになることで、思考や感情を過剰に同一化して、ネガティブな反応性に巻き込まれたり、流されたりしないようにしましょう。
次回は「間違ったセルフコンパッション」について解説していきます。
参考論文、資料
Neff K.D., Dahm K.A. (2015) Self-Compassion: What It Is, What It Does, and How It Relates to Mindfulness. In: Ostafin B., Robinson M., Meier B. (eds) Handbook of Mindfulness and Self-Regulation. Springer, New York, NY.
https://doi.org/10.1007/978-1-4939-2263-5_10
Kristin D. Neff, Tiffany A. Whittaker & Anke Karl (2017) Examining the Factor Structure of the Self-Compassion Scale in Four Distinct Populations: Is the Use of a Total Scale Score Justified?, Journal of Personality Assessment, 99:6, 596-607, DOI: 10.1080/00223891.2016.1269334
https://doi.org/10.1080/00223891.2016.1269334
Neff KD, Germer CK. A pilot study and randomized controlled trial of the mindful self-compassion program. J Clin Psychol. 2013 Jan;69(1):28-44. doi: 10.1002/jclp.21923. Epub 2012 Oct 15. PMID: 23070875.
https://doi.org/10.1002/jclp.21923
KRISTIN D. NEFF (2003) The Development and Validation of a Scale to Measure Self-Compassion, Self and Identity, 2:3, 223-250, DOI: 10.1080/15298860309027
https://doi.org/10.1080/15298860309027
セルフ・コンパッション―あるがままの自分を受け入れる 単行本 – 2014/11/26
クリスティーン・ネフ (著), 石村 郁夫 (翻訳), 樫村 正美 (翻訳)